「激突!」レビュー(池田)

激突!(原題:Duel)

 

 

予告編

1971年アメリカ

監督:スティーヴン・スピルバーグ

脚本、原作:リチャード・マシスン

製作:ジョージ・エクスタイン

音楽:ビリー・ゴールデンバーグ

撮影:ジャック・A・マータ

出演:デニス・ウィーヴァー、ジャクリーン・スコット、エディ・ファイアストーン、ルー・フリッツェル、ジーン・ダイナースキー、ルシール・ベンソン、キャリー・ロフティン他

あらすじ

荒涼な風景が広がるハイウェイ。セールスマンのデヴィッド(ウィーヴァー)はノロノロ運転の大型タンクローリーを追い越した。その直後、運転手(ロフティン)は執拗に嫌がらせ行為を行うようになり、やがてデヴィッドの命を脅かし始める。

 

 

レビュー

リチャード・マシスンの短編小説を映像化。スピルバーグが24歳頃に監督したテレビ映画で、彼の監督デビュー作ともいえる。(4年後に『ジョーズ』で一躍有名に)

タンクローリーに追われるだけのシンプルなストーリーなのに非常にスリリング。ガソリンスタンドやレストランまで着いて来たり、いつのまにか先回りしていたりする。一番のポイントは終始運転手の顔が見えないことである(腕と履いているブーツしか映らない)。これにより、タンクローリー自体が意志を持って追ってくるように思える。

 

 

下手なホラーよりも怖い。

豆知識

・主人公が助けを求めるために使用した電話ボックスのガラスにスピルバーグが映ってしまっている

・タンクローリーのタイヤはブリヂストン製

・映画では運転手の顔が分からないが、小説では主人公が顔を見ており、名前はケラー

・映画では主人公は休憩所のレストランでサンドイッチと頭痛薬を注文するが、小説ではビールを注文する。飲酒運転である

「フォーリング・ダウン」レビュー(池田)

フォーリング・ダウン(原題:Falling Down)

 

 

予告編

1993年アメリカ

監督:ジョエル・シュマッカー

脚本:エブ・ロー・スミス

製作:ティモシー・ハリス、アーノルド・コペルソン、ハーシェル・ワイングロッド

音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード

撮影:アンジェイ・バートコウィアク

出演:マイケル・ダグラス、ロバート・デュヴァル、バーバラ・ハーシー、レイチェル・ティコティン、チューズデイ・ウェルド、フレデリック・フォレスト他

あらすじ

真夏のロサンゼルス。渋滞に巻き込まれたD-フェンス、本名ウィリアム・フォスター(ダグラス)はクラクション、怒鳴り声、エアコンの故障、車内のハエに苛立っていた。突然車を乗り捨てた彼は周囲のドライバーに「家に帰る!」と言いその場を立ち去る。世の中の理不尽、不満に徹底的に抗う彼の暴走が始まった。

 

レビュー

『ウォール街』(1987)『ブラック・レイン』(1989)『氷の微笑』(1992)などで有名なマイケル・ダグラス主演のサスペンス・スリラー。

誰でも普段生活していると「ムカつく」「イライラする」「納得できない」などの不満・怒りが湧くことがあるだろう。本来ならそれを理性で抑えるが、この映画の主人公は実行に移す。ぼったくる店、金品要求のチンピラ、融通の効かないファストフード店、差別主義者、意味のない道路工事など、不快にさせるもの、邪魔するものに徹底的に武力で対抗し、自分の意見を押し通す。

 

 

「~してやりたいけど社会的に、人としてまずいなぁ」と思うことを主人公は平気でやるので、見ていて爽快である。しつこいチンピラをボコボコにするシーンはダグラスを応援したくなった。ファストフード店での主張も共感できる(マ〇〇ナ〇ドに皆が思っていることだと思う)。使用する武器がわらしべ長者的にグレードアップしていくのが面白かった。

彼を追う刑事役に、『ゴッドファーザー』(1972)『地獄の黙示録』(1979)『ディープ・インパクト』(1998)のロバート・デュヴァル。

 

ラストはちょっと悲しい。(決して感動的というわけではない)

世の中に不満を抱えている人にお勧めの作品。

「キラースノーマン」レビュー(池田)

キラースノーマン(原題:Jack Frost)

 

 

予告編

1997年アメリカ

製作会社:ストーリーテラー・フィルム他

監督:マイケル・クーニー

脚本:ジェレミー・ペイジ、マイケル・クーニー

製作:ジェレミー・ペイジ、ヴィッキ・スロトニック

音楽:クリス・アンダーソン、カール・シュルツ

撮影:ディーン・レント

出演:スコット・マクドナルド、クリストファー・オールポート、スティーブン・メンデル、F・ウィリアム・パーカー、アイリーン・シーリー、ロブ・ラベル他

あらすじ

猛吹雪の夜、連続殺人犯ジャック・フロスト(マクドナルド)を乗せた護送車が遺伝子研究所のトラックと事故を起こす。逃げようとしたジャックだが、トラックから溢れた薬品を全身に浴びて溶けてしまう。薬品の作用で彼のDNAは雪と融合。雪だるまとなって甦り、自分を逮捕した保安官サム(オールポート)の住む町スノーモントンへ向かう。

 

レビュー

雪だるまが人を殺すホラー。アイデアは面白いが、全体的に安っぽい仕上がりで90年代の作品に思えない。殺人雪だるまはいかにもスポンジで作りました的な着ぐるみ。見た目に反してやることは残虐。バリケードをしても、溶けて水になって隙間から侵入、再生するため、かなりしつこい。クリスマスツリーの飾りを使ったオープニングクレジットが可愛い。暇つぶしにはなる。

 

 

「ピラニア3D」レビュー(池田)

ピラニア3D(原題:Piranha 3D)

 

 

予告編

2010年アメリカ

製作会社:ディメンジョン・フィルム

ロケ地:アリゾナ州レイクハヴァス

監督:アレクサンドル・アジャ

脚本:ピーター・ゴールドフィンガー、ジョシュ・ストールバーグ

製作:アレクサンドル・アジャ、マーク・キャントン、グレゴリー・ルヴァスール、マーク・トベロフ

音楽:マイケル・ワンドマッチャー

撮影:ジョン・R・レオネッティ

出演:エリザベス・シュー、スティーブン・R・マックイーン、ヴィング・レイムス、アダム・スコット、ジェリー・オコンネル、クリストファー・ロイド他

あらすじ

アリゾナ州ビクトリア湖で釣り人の死体が見つかった。保安官ジュリー(シュー)らの調査で、凶暴なピラニアの祖先によるものと判明。ちょうど観光シーズン真っ盛りであり、湖畔で若者たちによる大規模なイベントが開かれようとしていた。保安官らは中止させようとするがピラニアの群れは人間を求めてイベント会場へ移動していた。

 

 

レビュー

ジョー・ダンテ監督の『ピラニア』(1978)を3Dでリメイク。オリジナルでは軍が開発した生物兵器だったが、こちらは地震による地割れから発生したという設定。監督は『ハイテンション』(2003)、『ヒルズ・ハブ・アイズ』(2006)などのホラーで名を揚げたアレクサンドル・アジャ。そのためかグロ度がかなり高い。終盤のイベント会場襲撃は地獄絵図。以前紹介した『ブレインデッド』の舞台が湖になった感じ。ピラニアに食われるだけでなく、水上ステージのケーブルやボートのスクリューで死ぬ人もいて、現実的にあり得そうでそっちの方が怖かった。

 

 

脇を固める出演陣も個性的。ヒロインの息子役に、アクション俳優スティーブ・マックイーンの孫のスティーブン・R・マックイーン。

釣り人役に『ジョーズ』(1975)の海洋学者のリチャード・ドレイファス。サメとの戦いでは生存したのに本作ではいきなり死ぬ。

 

熱帯魚店店主は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズのドク役のクリストファー・ロイド。

 

ピラニア襲撃前、Tシャツ姿の美女に水をかけて透け具合を競う「ウェットTシャツコンテスト」なるゲスい大会があるのだが、司会者を演じるのが、拷問ホラー『ホステル』(2005)、病原菌ホラー『キャビン・フィーバー』(2003)の監督イーライ・ロス。「透けろ透けろ~!」と言いながら水鉄砲を撃つバカな役だが最期は悲惨。

 

ポルノビデオ監督に、『スタンド・バイ・ミー』(1986)で肥満少年バーンを演じたジェリー・オコンネル。本作ではマッチョで面影がない。彼の下品な最期はもはやギャグ。

 

 

豆知識

・三石琴乃、小山力也、釘宮理恵など日本語吹替えの声優陣は豪華(だと個人的に思う)

・ヴィング・レイムス演じるファロン保安官の吹替えは出川哲朗。「オーマイガー!」「ヤバいよ、ヤバいよ」「リアルに痛い」などの台詞が平気で出てくる

「バッド・テイスト」レビュー(池田)

バッド・テイスト(原題:Bad Taste)

 

 

予告編

1987年ニュージーランド

製作会社:ウィングナット・フィルム

監督、製作、撮影:ピーター・ジャクソン

脚本:ピーター・ジャクソン、トニー・ヒルズ、ケン・ハモン

音楽:ミシェル・スカリオン

出演:テリー・ポッター、ピート・オハーン、マイク・ミネット、ピーター・ジャクソン、クレイグ・スミス、ダグ・ウレン他

あらすじ

ニュージーランドの田舎町カイホロの全住民が失踪。住民の最後のメッセージは「インベーダーが現れた!」。地球防衛サービス課の4人が派遣され調査するが、いたのは水色シャツにジーンズという格好の男たち。彼らの正体は人間を食料にしようと企むエイリアンだった。

 

 

レビュー

『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの監督として有名なピーター・ジャクソン。彼のデビュー作がこの映画。新聞会社に勤めながら、友人たちと4年の歳月をかけて作られた。人体破損のオンパレードで血、脳、内臓が飛び散るホラー。

 

 

 

『ロード~』や『ホビット』『キング・コング』など最近のジャクソン作品しか知らない人が見たらドン引きするに違いない。私は「気持ち悪い」「不快」とは感じなかった。死ぬ奴が皆宇宙人という設定だからかもしれない。(むしろ爽快さを感じた)

調査隊員デレクとエイリアンのロバートをジャクソンが一人二役で演じているが全然容姿が違う。ハイテンションでマシンガンを乱射したりチェーンソーを振り回したりとかなりのインパクト。終盤は人間VSエイリアンの全面対決。自主映画と思えないくらいの本格的なアクションで、爆破シーンもありで見ごたえあり。

 

 

グロテスクなので見る人を選ぶが、一見の価値はあると思う。良作。

豆知識

・日本語吹き替え版が存在。調査隊4人にたけし軍団の井出らっきょ、ラッシャー板前、ガダルカナル・タカ、つまみ枝豆、エイリアンのボス役はベテラン声優の大木民夫

「スラッグス」レビュー(池田)

スラッグス(原題 Slugs, muerte viscosa)

 

 

予告編

1988年アメリカ/スペイン

監督:J・P・サイモン

脚本:ホセ・アントニオ・エスクリヴァ、ロン・ガントマン、J・P・サイモン

原作:ショーン・ハストン

製作:フランチェスカ・デ・ローレンティース、ホセ・アントニオ・エスクリヴァ、J・P・サイモン

撮影:フリオ・ブラガド

出演:マイケル・ガーフィールド、キム・テリー、フィリップ・マクヘイル、アリシア・モロ、サンティアゴ・アルヴァレツ、コンチャ・キュートス他

あらすじ

アメリカの田舎町。体中を食い荒らされ、内臓が無くなった老人の死体が発見される。謎の死亡事故が何件も発生し、衛生局員マイク(ガーフィールド)は調査に乗り出すが、それは異常に大きくなり凶暴化したナメクジの群れによるものだった。

 

 

レビュー

「アニマルパニック」というジャンルの映画は多い。文字通り人間が生物の脅威にさらされる内容である。有名な作品は、サメの『ジョーズ』(1975)、クマの『グリズリー』(1976)、ワニの『アリゲーター』(1980)とかだろう。これらは「巨大」な生物vs人間だが、「小さいがたくさん」な生物vs人間というのもある。

『鳥』(1963)、『ピラニア』(1978)、ゴカイの『スクワーム』(1976)、毒グモの『アラクノフォビア』(1990)などだ。個人的には後者の方が身近に感じる分、より怖い気がする。

本作は後者。登場するナメクジは15cmくらいの大きさで真っ黒、牙をもち人間に食らいつくというとんでもない存在。トイレや流し台から民家に侵入して人を襲うのだが、体にまとわりつき、血に染まっていく様子は怖い。ナメクジが混入したサラダを食べてしまった男の末路が悲惨極まりない。(あのシーンで生野菜が嫌いになった人はいると思う)

 

 

 

この作品、原案となった小説『スラッグス』がある。著者はショーン・ハストン。読んだことはないが読んでみたい。

「処刑!血のしたたり」レビュー(池田)

処刑!血のしたたり(原題 Intruder)

 

 

1989年アメリカ

製作会社:ビヨンド・インフィニティ、ファントム・プロダクション

ロケ地:カリフォルニア州ベル

監督:スコット・スピーゲル

脚本:ローレンス・ベンダー、スコット・スピーゲル

製作:ローレンス・ベンダー、ダグラス・ヘスラー

音楽:ベイジル・ポールドゥリス

撮影:フェルナンド・アルゲレス

出演:エリザベス・コックス、レネ・エステヴェス、ダニー・ヒックス、デヴィッド・バーンズ、サム・ライミ、ユージーン・グレイザー、ビリー・マーティ他

あらすじ

大型スーパー”ウォルナット・レイク・マーケット”。ある夜、レジ係のジェニファー(コックス)のもとへ元恋人のクレイグ(バーンズ)が現れ、復縁するよう迫ってきた。従業員総出で取り押さえて店外へ追い出し、警察に通報すると彼は姿を消す。一安心するが、店長のダニー(グレイザー)から、スーパーが赤字続きのため閉店することになったと告げられる。閉店セールの作業を始める彼らだったが、何者かにより一人ずつ殺されていく。

 

 

レビュー

スーパーマーケットが舞台のスプラッター・ホラー。従業員役に『死霊のはらわた』や『スパイダーマン』シリーズの監督で有名なサム・ライミと、その弟テッド・ライミ、終盤に現れる警官役に『死霊の~』の主演のブルース・キャンベルが出てくる。

 

序盤から中盤にかけては、雑談、ヘッドホンで音楽、カップルでイチャイチャ、商品の菓子をつまみ食いなど不真面目な従業員の様子を描いて冗長だが、殺害シーンは特殊メイクを駆使して気合いが入っている。包丁で切り裂く、刺すなどは序の口であり、ゴミ用圧縮機と電動ノコのシーンがかなりキツい。邦題に『血のしたたり』とあるが、したたるなんてレベルじゃない。

 

とにかく犯人の行動が狂っている。死体をバラバラにして、手首をパック詰め、手首をエビの水槽に落とす、半額セールの札を掛けてゴミ箱に放り込む、生首でボコボコに殴打する。ラストもめでたしめでたしという感じではなく、後味の悪い終わり方だった。

オレオやコーンフロスティなど、日本でもおなじみの商品が所々に映る。電話機の内側から、床から、ガラス瓶越しなど変なカメラワークが多かった。

 

 

 

豆知識

・終盤に登場するパンの配達人は監督のスピーゲルが演じている

・キャンベルとともに、製作、脚本を手掛けたベンダーが警官役で出演

・スピーゲル、サム・ライミ、キャンベルは同じ高校に通っていた。現在でも友人関係を築いている

・スーパーの店名はスピーゲルの出身地であるミシガン州ウォルナット・レイクに由来

「ブロブ/宇宙からの不明物体」レビュー(池田)

ブロブ/宇宙からの不明物体(原題:The Blob)

 

 

1988年アメリカ

製作会社:トライスター・ピクチャーズ

監督:チャック・ラッセル

脚本:チャック・ラッセル、フランク・ダラボン

製作:ジャック・H・ハリス、エリオット・カストナー

音楽:マイケル・ヘーニッヒ

撮影:マーク・アーウィン

出演:ケヴィン・ディロン、ショウニー・スミス、ドノヴァン・リーチ、ジェフリー・デマン、キャンディ・クラーク、ジョー・セネカ、デル・クローズ他

あらすじ

アメリカの田舎町アーバーヴィルに隕石が落下。隕石の中のピンクの物体が、興味本位で近づいたホームレスの老人の腕に貼り付いた。高校生ポール(リーチ)、メグ(スミス)、不良のブライアン(ディロン)は彼を病院へ連れていくが、物体は老人の体を消化してどんどん巨大化。町の住民へ襲いかかる。

 

 

レビュー

『マックイーンの絶対の危機』(1958)(主演はスティーブ・マックイーン、別題『人食いアメーバの恐怖』)のリメイク作品。巨大アメーバが人間を襲うSFパニックである。

監督に、ジム・キャリー主演の『マスク』(1994)の監督のラッセル、脚本に『グリーンマイル』(1999)『ショーシャンクの空に』(1994)の監督のダラボンと、今考えると結構豪華なスタッフである。ヒロイン役のスミスは、最近では『SAW』シリーズに出演。

キャラクター像やストーリーの構成がしっかりしており、犠牲者の襲われ方もバリエーションに富んでおり、なかなかグロテスク。印象に残ったのは調理場の流し台のシーン。死にそうにない人が死ぬなど、先の読めない展開が面白い。終盤、ホラー映画を上映中の映画館が襲撃される場面は迫力があった。

 

 

 

 

殺人アメーバ誕生の原因に、当時のアメリカの政治情勢を感じられた。

豆知識

・映画館の観客役に監督のラッセルが出演しているらしい

・終盤、仲間に見捨てられる兵士を演じたのはビル・モーズリー。ホラー映画に多く出演しており、『悪魔のいけにえ2』(1986)のチョップトップ・ソーヤー役が有名。

・オリジナル版では赤色だったアメーバが、本作ではピンク

「ブレインデッド」レビュー(池田)

映画批評始めました

※ネタバレ有

ブレインデッド(原題 BraindeadまたはDead Alive)

 

 

予告編

1992年ニュージーランド

製作会社:ウィングナット・フィルム

監督:ピーター・ジャクソン

脚本:スティーヴン・シンクレア、フランシス・ウォルシュ、ピーター・ジャクソン

製作:ジム・ブース、ジェイミー・セルカーク

音楽:ピーター・ダゼント

撮影:マレイ・ミルネ

出演:ティモシー・バルム、ダイアナ・ペニャルヴァー、エリザベス・ムーディ、イアン・ワトキン、ブレンダ・ケンドール、スチュアート・デヴェニー、ジェド・ブロフィ他

あらすじ

1957年。スマトラのスカル島にて捕獲された凶暴な珍獣「ラット・モンキー」がニュージーランドのウェリントン動物園に持ち込まれる。

 

ウェリントン郊外の大きな屋敷に住むライオネル(バルム)は、性格の悪い母ベラ(ムーディ)からこき使われる毎日を送っていた。

ある日、雑貨屋の娘パキータ(ペニャルヴァー)がライオネルに一目惚れ。彼女のアプローチの結果、二人きりで動物園へ行くことに。そんな彼らを良く思わないベラがこっそり後をつけるが、うっかりラット・モンキーに噛まれてしまう。体中の皮膚が剥がれ落ちるなど、ベラの容体はどんどん悪化。実はラット・モンキーは、まれたものがゾンビになる恐ろしい怪物だった。

 

 

レビュー

ピーター・ジャクソンときくと、最近では『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『ホビット』など幻想的なファンタジー作品のイメージが強いかもしれない。だが初期のジャクソン作品は、グロテスクな血みどろホラーが主だった。(人間と異星人のスプラッタな戦いを描いた『バッド・テイスト』(1987)やドラッグや暴力、汚職にまみれた人形劇『ミート・ザ・フィーブルズ/怒りのヒポポタマス』(1989)など)

冒頭、カゴを担いだ探検家とガイドが原住民から追われている。何とか逃げ出した彼らだが、探検家がカゴの中の「何か」に手を噛まれる。それを見たガイドたちは血相を変え「切らないと」と切れ味の悪そうな鉈で彼の手を切断!額にも傷を見つけ「もう助からない」と頭に鉈を振り下ろす。オープニングクレジットも始まっていないのにすごい展開である。

 

その後、ウェリントンへ場面は変わる。主人公ライオネルは見るからに冴えない気弱な青年。母親から掃除、庭の手入れ、ゴキブリ退治など雑用を押し付けられる日々。この母親の嫌味なキャラが非常に憎たらしい。

母親がゾンビ化して看護婦、チンピラなどさまざま人が犠牲になるのだが(襲われた人もゾンビになる。これは定番)、なんとライオネルは地下室に彼らを閉じ込めて面倒を見るのである。これが後の惨劇へとつながっていく。

 

見どころは要所要所に挿入されるグロテスクな描写である。ハリーハウゼン作品のようにカクカク動くラット・モンキー(とてもブサイク)、噛まれて体が腐ってゆく母親、カスタードクリームに落ちる膿、入れ過ぎたため死体から噴出する防腐剤、ゾンビの間に産まれた赤ん坊ゾンビ(こいつもブサイク)など。ただ気持ち悪いだけでなく、所々にブラックなギャグも散りばめられている。カンフーでゾンビを倒す神父、虐待みたいな勢いで赤ん坊ゾンビをあやすライオネルなどだ。

 

 

終盤は画面中が血に染まる。ベラの遺産と屋敷を手に入れようと画策する弟レス(ワトキン、エルヴィス・プレスリーが太ったみたいな人)が勝手にパーティを開くのだが、動物用興奮剤を打って(ライオネルのうっかりミス。本当は毒薬で殺そうとした)凶暴化したゾンビが招待客に襲い掛かるという凄まじい展開になる。肋骨、腸の引きずり出し、皮膚剥ぎ、食いちぎりなど痛々しい描写がてんこ盛り。無事な者も包丁、ハサミ、ミキサーなどでゾンビをグッチャグチャの肉片に変えていく。こんなシーンでもブラックユーモアは盛り込まれているがとにかく汚すぎてかなり気持ち悪い。キレたライオネルが芝刈り機で応戦するのは圧巻。彼がたくましくなっていくのが面白い。

 

 

 

 

25メートルプール一杯分の血糊が使われたという噂は本当かもしれない。苦手な人は絶対見てはいけない映画だ。トラウマになるかもしれない。吐くかもしれない。だが、好きな人には、やりすぎなスプラッター描写がクセになり相当面白い作品であると思う。私はメインテーマをWalkmanに入れている。

豆知識

・本編前にニュージーランド国旗とエリザベス女王が映り、終盤でライオネルがエリザベス女王の写真を飛んできた血から守るのは、政府から補助金を受けていたから

・血糊はメープルシロップで作られた。撮影現場はさぞかし甘い匂いに包まれたことだろう

・劇中の路面電車はミニチュアの合成映像

・写真と回想で登場するライオネルの父親を演じたのは本作プロデューサーのジム・ブース