「ブレインデッド」レビュー(池田)

映画批評始めました

※ネタバレ有

ブレインデッド(原題 BraindeadまたはDead Alive)

 

 

予告編

1992年ニュージーランド

製作会社:ウィングナット・フィルム

監督:ピーター・ジャクソン

脚本:スティーヴン・シンクレア、フランシス・ウォルシュ、ピーター・ジャクソン

製作:ジム・ブース、ジェイミー・セルカーク

音楽:ピーター・ダゼント

撮影:マレイ・ミルネ

出演:ティモシー・バルム、ダイアナ・ペニャルヴァー、エリザベス・ムーディ、イアン・ワトキン、ブレンダ・ケンドール、スチュアート・デヴェニー、ジェド・ブロフィ他

あらすじ

1957年。スマトラのスカル島にて捕獲された凶暴な珍獣「ラット・モンキー」がニュージーランドのウェリントン動物園に持ち込まれる。

 

ウェリントン郊外の大きな屋敷に住むライオネル(バルム)は、性格の悪い母ベラ(ムーディ)からこき使われる毎日を送っていた。

ある日、雑貨屋の娘パキータ(ペニャルヴァー)がライオネルに一目惚れ。彼女のアプローチの結果、二人きりで動物園へ行くことに。そんな彼らを良く思わないベラがこっそり後をつけるが、うっかりラット・モンキーに噛まれてしまう。体中の皮膚が剥がれ落ちるなど、ベラの容体はどんどん悪化。実はラット・モンキーは、まれたものがゾンビになる恐ろしい怪物だった。

 

 

レビュー

ピーター・ジャクソンときくと、最近では『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『ホビット』など幻想的なファンタジー作品のイメージが強いかもしれない。だが初期のジャクソン作品は、グロテスクな血みどろホラーが主だった。(人間と異星人のスプラッタな戦いを描いた『バッド・テイスト』(1987)やドラッグや暴力、汚職にまみれた人形劇『ミート・ザ・フィーブルズ/怒りのヒポポタマス』(1989)など)

冒頭、カゴを担いだ探検家とガイドが原住民から追われている。何とか逃げ出した彼らだが、探検家がカゴの中の「何か」に手を噛まれる。それを見たガイドたちは血相を変え「切らないと」と切れ味の悪そうな鉈で彼の手を切断!額にも傷を見つけ「もう助からない」と頭に鉈を振り下ろす。オープニングクレジットも始まっていないのにすごい展開である。

 

その後、ウェリントンへ場面は変わる。主人公ライオネルは見るからに冴えない気弱な青年。母親から掃除、庭の手入れ、ゴキブリ退治など雑用を押し付けられる日々。この母親の嫌味なキャラが非常に憎たらしい。

母親がゾンビ化して看護婦、チンピラなどさまざま人が犠牲になるのだが(襲われた人もゾンビになる。これは定番)、なんとライオネルは地下室に彼らを閉じ込めて面倒を見るのである。これが後の惨劇へとつながっていく。

 

見どころは要所要所に挿入されるグロテスクな描写である。ハリーハウゼン作品のようにカクカク動くラット・モンキー(とてもブサイク)、噛まれて体が腐ってゆく母親、カスタードクリームに落ちる膿、入れ過ぎたため死体から噴出する防腐剤、ゾンビの間に産まれた赤ん坊ゾンビ(こいつもブサイク)など。ただ気持ち悪いだけでなく、所々にブラックなギャグも散りばめられている。カンフーでゾンビを倒す神父、虐待みたいな勢いで赤ん坊ゾンビをあやすライオネルなどだ。

 

 

終盤は画面中が血に染まる。ベラの遺産と屋敷を手に入れようと画策する弟レス(ワトキン、エルヴィス・プレスリーが太ったみたいな人)が勝手にパーティを開くのだが、動物用興奮剤を打って(ライオネルのうっかりミス。本当は毒薬で殺そうとした)凶暴化したゾンビが招待客に襲い掛かるという凄まじい展開になる。肋骨、腸の引きずり出し、皮膚剥ぎ、食いちぎりなど痛々しい描写がてんこ盛り。無事な者も包丁、ハサミ、ミキサーなどでゾンビをグッチャグチャの肉片に変えていく。こんなシーンでもブラックユーモアは盛り込まれているがとにかく汚すぎてかなり気持ち悪い。キレたライオネルが芝刈り機で応戦するのは圧巻。彼がたくましくなっていくのが面白い。

 

 

 

 

25メートルプール一杯分の血糊が使われたという噂は本当かもしれない。苦手な人は絶対見てはいけない映画だ。トラウマになるかもしれない。吐くかもしれない。だが、好きな人には、やりすぎなスプラッター描写がクセになり相当面白い作品であると思う。私はメインテーマをWalkmanに入れている。

豆知識

・本編前にニュージーランド国旗とエリザベス女王が映り、終盤でライオネルがエリザベス女王の写真を飛んできた血から守るのは、政府から補助金を受けていたから

・血糊はメープルシロップで作られた。撮影現場はさぞかし甘い匂いに包まれたことだろう

・劇中の路面電車はミニチュアの合成映像

・写真と回想で登場するライオネルの父親を演じたのは本作プロデューサーのジム・ブース

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