
今年の新歓ブログリレーでは「ぼくのお日さま」 という映画について紹介したいと思います。
吃音をもつ小学6年生のタクヤ(越山敬達)は、 ある日自分の習っているアイスホッケーと同じリンクでフィギュア スケートの練習をする少女・さくら(中西希亜良) の姿に心を奪われます。それからというもの、 フィギュアには適さないホッケー用の靴で何度も転びながら見よう 見まねでフィギュアのステップをするようになるタクヤ。 そんなタクヤの様子を見て、 さくらのコーチでありかつては男子フィギュアスケート選手として 注目を集めていた荒川(池松壮亮) が自分の靴を貸して練習に付き合い、 さらにはタクヤとさくらでペアのアイスダンスの練習を始めようと 提案します。氷の上でしだいに心を通わせていく3人の姿を、 淡い映像が冬の北海道の澄んだ空気や柔らかな光とともに優しく映 し出します。
この作品はカンヌ国際映画祭の「ある視点部門」 に正式出品されたほか、 国内外でさまざまな映画賞を受賞しました。 去年の今頃に解禁された情報を目にしてから公開をとても楽しみに していたにもかかわらずタイミングを逃してしまい、 やっと見ることができたのがこの春休みでした。
90分という短めの上映時間からある程度覚悟はしていたものの、 エンドロールが流れた瞬間には「 3人のことをもっと見ていたかった」 と物足りなさを覚えてしまいました。しかし、 雪が解けて春の訪れを感じるようになったこの時期に映画のラスト シーンがリンクし、 今この瞬間も世界のどこかで彼らの小さな物語が続いているのだと 思わせてくれる終わり方だとも感じました。 エンドロールが流れても、 私たちには見ることができないとしても、 3人の生活に終わりなどなく、 彼らはきっと私たちと同じ新しい春を過ごしているのでしょう。 映画館での鑑賞はかないませんでしたが、 見たのがこの時期でよかったと心から思いました。
また、この作品は監督・ 脚本を務めた奥山大史さんがハンバートハンバートによる同名の主 題歌にインスピレーションを受けて描いたものだそうですが、 その中の「だいじなことを言おうとすると こ こ こ ことばがの の のどにつまる」という歌詞を聞いた瞬間に、 単にタクヤが吃音だからという理由からではなく、 私の中でこの作品のストーリーがぴったり重なりました。 このブログを読んでくれた皆さんにもぜひ、 3人の優しい世界に触れていただきたいです。
余談にはなりますが、 この作品で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した越山敬達さんは 今年公開の映画「国宝」で主人公の1人の幼少期を演じています。 また彼の出演した「天狗の台所」 というドラマはどうぶつの森くらい平和で心が落ち着くのでおすす めです。受験期の私の精神安定剤になっていました。 ぼくのお日さま→天狗の台所(1・2)→ アカデミー賞授賞式の順にみると成長を感じてとても感慨深いです 。これからの活躍に期待しています。