こんにちは。北大映研2年の河村です。
北海道ではようやく桜が咲き始め、出会いと別れの季節も一段落といった感じですね。そんな今日この頃にぴったりな映画があります。
ということで、本日のブログリレーではアニメーション映画「ロボット・ドリームズ」を紹介させて頂きます。
大都会・ニューヨークのアパートの一室で孤独に暮らす主人公(犬)。彼が深夜テレビで流れるCMを見て衝動買いしたのは、友達用ロボットでした。季節は夏。多くの人(動物)でにぎわうセントラルパークやクイーンズボロ橋、エンパイアステートビルなどのニューヨーク名所を巡りながら、二人は友情を深めていきます。
セントラルパークにて、ラジカセから流れるEarth, Wind & Fireの世界的名曲「September」に乗り、二人が手を取り合って踊るシーンでは、見ているこちらまで楽しい気持ちになります。また、画面全体に詳細に描き込まれた鮮やかな都会の風景は、どの一瞬を切り取ってもポストカードにしたくなるほどです。
ところが、海水浴に行った際にロボットは故障し、ビーチから一歩も動けなくなってしまいます。さらに悪いことに、その日は海水浴最終日。ビーチは次の夏まで封鎖されることになってしまって・・・
本作には一切のセリフがありません。また、登場するキャラクターは皆人間ではありません。しかしながら、作中で描かれる二人の友情の顛末は、誰しもが一度は経験するものであり、気づけば犬とロボットそれぞれに感情移入してしまいます。
ゆるかわいいデザインで表情豊かに描かれるキャラクター、観客を飽きさせないカラフルな背景映像、陽気な音楽、・・・これらの要素から本作は、小さな子どもでも楽しめるアニメとして非常に優秀な作品と言えるでしょう。しかし、(もちろんのことですが)単なる子ども向けアニメではありません。
幼い頃に見た絵本やアニメを大きくなって見返してみたら、その作品の持つ真のテーマや、登場人物の繊細な感情に気づいた、なんて経験はありませんか?本作は間違いなく、その類の作品です。幼い子どもにとっては、二人の友情はバッドエンドを迎えたように見えるかもしれませんが、それは決して単純なバッドエンドではないことが、大人になった私たちには分かるのです。そういうわけで本作は、私がぜひまた見返したい作品であると同時に、私がもし子どもを育てることになったらぜひ見せたい作品の一つでもあります。それで、その子が成長してから、「なるほど、そういうことだったのかぁ・・・」という気持ちにさせたい。
個人的に、本作最大の魅力は、穏やかな感傷に包まれるラストシーンの終わり方なのですが、私の文章力ではどうやってもネタバレになってしまうので、この辺で紹介を終えようと思います。(すでにネタバレだよ!という方、ごめんなさい。ストーリーの核心を避けながら作品を紹介するのってすごく難しいです・・・)
本作は、青春を共にした友人、楽しい思い出をくれたかつての恋人、などなど、今では離れ離れになった大切な人たちに思いを馳せて、切なくも温かい気持ちになれる作品です。気になった方はぜひご覧ください。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
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作品情報
「ロボット・ドリームズ」
公開日:2024年11月8日
監督・脚本:パブロ・ベルヘル
原作:サラ・バロン
上映時間:102分
主な受賞:第96回アカデミー賞ノミネート、第36回ヨーロッパ映画賞、第51回アニー賞、第38回ゴヤ賞受賞
参考文献
ロボット・ドリームズ公式サイト,https://klockworx-v.com/robotdreams/,2024/04/24閲覧