「ロジャー・ラビット」レビュー(池田)

ロジャー・ラビット(原題:Who Framed Roger Rabbit)

 

 

予告編

1988年アメリカ

監督:ロバート・ゼメキス

脚本:ジェフリー・プライス、ピーター・S・シーマン

原作:ゲイリー・K・ウルフ

製作:フランク・マーシャル、ロバート・ワッツ

製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、キャスリーン・ケネディ

音楽:アラン・シルヴェストリ

撮影:ディーン・カンディ

出演:ボブ・ホスキンス、クリストファー・ロイド、ジョアンナ・キャシディ、チャールズ・フライシャー、スタッビー・ケイ、アラン・ティルヴァーン、リチャード・ルパーメンティア他

あらすじ

舞台はトゥーン(アニメキャラ)が現実世界に存在する、1947年のハリウッド。人気スターのロジャー・ラビット(声:フライシャー)は妻ジェシカが浮気しているという噂のせいでスランプ気味。探偵エディ(ホスキンス)に調査を依頼するも、浮気相手が殺され、ロジャーに容疑がかかってしまう。二人は協力して潔白を証明しようとするが、この事件には大きな陰謀がからんでいた。

 

 

レビュー

実写とアニメーションの合成作品。レベルの高さから視覚効果・編集・音響効果の3つの部門でアカデミー賞を受賞した。アメリカを代表するアニメキャラクターが総出演。

ディズニーからミッキー、ミニー、ドナルド、ピノキオ、ダンボ

メトロ・ゴールドウィン・メイヤーからドルーピー

ワーナーからバッグス・バニー、トゥイーティー、シルベスター、ダフィー・ダック

パラマウントからベティ・ブープ

ユニバーサルからウッディー・ウッドペッカー

など、豪華な面々が並ぶ。マニアでないとわからないマイナーなキャラ(ヒヤシンス・ヒッポ、ブレア・ベア、トード氏など)も登場。本作オリジナルのキャラも個性的。彼らが人間とコミカルでスラップスティックなストーリーを巻き起こす。アメリカのアニメが好きなら楽しめる。

 

 

豆知識

・スピルバーグはポパイ、トムとジェリーも出演させたかったが許可が下りなかった

・東京ディズニーランドに本作がテーマのアトラクション『ロジャーラビットのカートゥーンスピン』がある

「ブラッディピエロ 100人連続切裂き」レビュー(池田)

ブラッディピエロ 100人連続切裂き(原題:100 Tears)

 

 

※予告編は掲載せず

2007年アメリカ

監督:マーカス・コッチ

脚本:ジョー・デヴィソン

製作:アラナ・ベーカー、エルマー・バーガー、ジョー・デヴィソン

音楽:クリスチャン・デイ、カール・ホーマー

撮影:ウェスリー・ウィング

出演:ジョージア・クリス、ジョー・デヴィソン、レイン・ブラウン、ジャック・エイモス、キブウェ・ドーシー、ロッド・グラント、ノーバート・サンティアゴ、ジェフ・ディラン・グラハム他

あらすじ

更生訓練施設で殺人事件が発生。新聞記者のジェニファー(クリス)とマーク(デヴィソン)は調査に乗り出す。目撃証言等から、ピエロの格好をした男によるものと判明。ピエロの犠牲者はどんどん増えていく。

 

 

レビュー

監督は特殊メイクアーティストのマーカス・コッチ。メタボなピエロが巨大な包丁で殺しまくるスプラッターホラー。殺害シーンは非常に過激で、映画開始10分で虐殺が始まる。四肢や首がポンポン飛び、血糊の量も多いが、血と内臓を詰め込んだ人形を乱雑にぶった切るという感じで安っぽい出来。それでも、慣れてない人にはかなりきつい描写だと思う。一方でストーリーや構成はかなり陳腐。グロいシーンを撮りたいためだけに作られた映画なのではと思えてくる。

 

 

殺される人の数は多い。あまりにもスピーディにサクサク殺されるので誰が誰だが分からない。邦題の100人までとはいかないが、20人近く殺されている。これは『新・13日の金曜日』(1985)(13金シリーズの5作目)の死者数21人に匹敵する。

殺人鬼のピエロには娘がおり、この娘も異常者。後半は父親と協力して無差別殺人を開始し、画面中が血の海になるが、どう見てもゴム製の腸、どう見てもマネキンの頭部など、ここでも安っぽさ全開。

 

内容以上に衝撃的だったのは日本語吹替えである。うろ覚えだが、以下に例を紹介する。

・字幕「コーヒーお待たせしました」→吹替え「うどんお待たせしました」

・字幕「今度おごらせてくれないか」→吹替え「今度ハイヒールで踏んでくれないか」

・字幕「スポール刑事から聞いた」→吹替え「クドウマサルから聞いた」

・調理人が「今夜は沖縄料理さ~。あぁ、サーターアンダギー食いたい」

・車椅子の女性が「どすこい、どすこい」

他にも、いきなり方言(茨城弁らしい)になったり、「からあげクンの食い過ぎだ」、断末魔が「痛ーい」、「ブヒッ」などバカげた吹替えが飛び交う。吹替え声優陣は聞いたことない人たちばかり。キャスト、スタッフのインタビューは字幕がないので内容は理解できず。隅から隅まで滅茶苦茶な映画だった。しかし、一見の価値ありの吹替えだと思う。バカバカしすぎるから。

「悪魔の毒々モンスター」レビュー(池田)

悪魔の毒々モンスター(原題:The Toxic Avenger)

 

 

予告編

1984年アメリカ

監督、製作:マイケル・ハーツ、ロイド・カウフマン

脚本:ジョー・リッター、ロイド・カウフマン

音楽:マーク・ホフマン、ディーン・サマーズ

撮影:ジェームズ・ロンドン、ロイド・カウフマン

出演:アンドリー・マランダ、ミッチェル・コーエン、ジェニファー・バプティスト、シンディ・マニオン、ロバート・プリチャード、ゲイリー・シュナイダー、パット・ライアン・Jr、マーク・トーグル他

あらすじ

化学汚染がひどく治安も悪いニュージャージー州トロマヴィル。フィットネスクラブで清掃員として働くメルヴィン(トーグル)は不良の客からいつもバカにされていた。エスカレートしたいじめの果てに、彼は有毒廃棄物のドラム缶に転落してしまう。全身が焼けただれ死んだと思われたが、汚染物質の作用によりマッチョで醜い大男「毒々モンスター」に変身。悪を倒すという欲求が芽生え、町にはびこる悪党を退治していく。

 

 

 

 

レビュー

製作はトロマ・エンターテインメント。ロイド・カウフマン(名門私立イェール大学出身)とマイケル・ハーツが1974年に設立した映画会社である。ほとんどの作品が下品でくだらなく、劇場公開に向かないものばかりだが、一部でカルト的人気を誇る(有名人では関根勤がトロマのファン)。

 

 

登場人物は揃いも揃って間抜けで、ファッションセンスがおかしい。メルヴィンは見るからにひ弱でダサい。ジャグジーバスにモップを突っ込んで客にボコボコにされる。彼をいじめる不良グループは筋トレしながら麻薬を吸い、ロッカールームで交わり、ゲーム感覚で子供をひき殺す極悪集団。肥満体の市長は賄賂や汚職をしまくり悪を擁護。まったく感情移入できないが、このバカバカしい設定がトロマ作品の魅力かもしれない。

 

 

汚染物質を浴びたメルヴィンはモンスターに変身。ここら辺の説明は一切ない。悪を倒す欲求が生まれ、平和を乱す悪党を殺しまくる。全体的にコミカルなのに、ミキサーを口に入れたりトレーニングマシンのおもりで潰したりと殺害シーンはグロくて残虐。度を超した人体破壊もトロマの特徴である。悪人しか殺さず、一般市民には親切なのでモンスターは町の人から支持される。恋人までできる。(醜い彼をなぜ好きになれたのか、それには理由がある)

 

 

結構面白い作品だが、あまりに下品なので好き嫌いは分かれる。コメディの部類に入るがグロが無理なら見てはいけない。

豆知識

・ロイド・カウフマンはスタローン主演の『ロッキー』(1976)に出演している

・本作は全4作でシリーズ化されている。続編の「悪魔の毒々モンスター東京へ行く」(1989)の舞台は東京。安岡力也、関根勤、漫画家の永井豪(代表作はデビルマン、マジンガーZ、キューティーハニー)が出演

「ドゥ・ザ・ライト・シング」レビュー(池田)

ドゥ・ザ・ライト・シング(原題:Do the Right Thing)

 

 

予告編

1989年アメリカ

監督、脚本、製作:スパイク・リー

音楽:ビル・リー

撮影:アーネスト・ディッカーソン

出演:ダニー・アイエロ、オシー・デイヴィス、ルビー・ディー、リチャード・エドソン、ジャンカルロ・エスポジート、スパイク・リー、ビル・ナン、ジョン・タートゥーロ他

あらすじ

この夏最高に暑い日を迎えようとしている、ブルックリンのベッドフォード・スタイヴェサント地区。黒人が多いこの町で、イタリア系アメリカ人サル(アイエロ)の経営するピザ屋は25年にわたって町民に愛されてきた。だがその日は、配達係ムーキー(リー)の友人バギン・アウト(エスポジート)が、壁に飾られている写真がイタリア系の有名人ばかりであることに言いがかりをつけてきた。これが発端となり、彼らの人種間の軋轢が表に出始める。

 

 

レビュー

監督は人種差別、貧困、麻薬など重苦しい作品(『スクール・デイズ』(1988)、『ジャングル・フィーバー』(1991)、『マルコムX』(1992)、『クロッカーズ』(1995)など)が多いスパイク・リー。出演もしており、本作ではやる気のないピザ配達人を演じる。

 

黒人街が舞台だが、ピザ屋のイタリア系親子、商店の韓国人夫婦、プエルトリコ系の若者グループ、白人の警官などさまざまな人種が登場する群像劇。夏の暑さの表現がうまく、登場人物の不快、イライラが伝わってくる。

 

 

飲んだくれだが哲学的な老人、巨大ラジカセを持ち歩く男、どもりながら写真を売る男、無駄話ばかりの中年三人組など個性の強いキャラクターが多くて面白いが、露骨な人種差別表現は見ていて気分のいいものではない。カメラ目線での偏見発言5人連続のシーンはすごい。

 

 

終盤に近づくにつれて(表面的に)良好だった人間関係が崩れてゆき、悲しい事件が勃発。誰も得しない形で終わってしまう。名作、傑作とは思わないが、私は何度も鑑賞してしまう。

豆知識

・狂言回し的な存在のラジオDJを演じるのは、無名な頃のサミュエル・L・ジャクソン

 

・音楽を担当したビル・リーはスパイクの父で、ジェイド役のジョイ・リーはスパイクの妹

・白人警官二人組、ポンテとロングは『ジャングル・フィーバー』でも同じ役で出演。さらにロング役のリック・アイエロはダニーの息子

・黒人の若者グループの一人は、『バッドボーイズ』シリーズでウィル・スミスと主演を務めたマーティン・ローレンス。ほぼデビュー作

 

「激突!」レビュー(池田)

激突!(原題:Duel)

 

 

予告編

1971年アメリカ

監督:スティーヴン・スピルバーグ

脚本、原作:リチャード・マシスン

製作:ジョージ・エクスタイン

音楽:ビリー・ゴールデンバーグ

撮影:ジャック・A・マータ

出演:デニス・ウィーヴァー、ジャクリーン・スコット、エディ・ファイアストーン、ルー・フリッツェル、ジーン・ダイナースキー、ルシール・ベンソン、キャリー・ロフティン他

あらすじ

荒涼な風景が広がるハイウェイ。セールスマンのデヴィッド(ウィーヴァー)はノロノロ運転の大型タンクローリーを追い越した。その直後、運転手(ロフティン)は執拗に嫌がらせ行為を行うようになり、やがてデヴィッドの命を脅かし始める。

 

 

レビュー

リチャード・マシスンの短編小説を映像化。スピルバーグが24歳頃に監督したテレビ映画で、彼の監督デビュー作ともいえる。(4年後に『ジョーズ』で一躍有名に)

タンクローリーに追われるだけのシンプルなストーリーなのに非常にスリリング。ガソリンスタンドやレストランまで着いて来たり、いつのまにか先回りしていたりする。一番のポイントは終始運転手の顔が見えないことである(腕と履いているブーツしか映らない)。これにより、タンクローリー自体が意志を持って追ってくるように思える。

 

 

下手なホラーよりも怖い。

豆知識

・主人公が助けを求めるために使用した電話ボックスのガラスにスピルバーグが映ってしまっている

・タンクローリーのタイヤはブリヂストン製

・映画では運転手の顔が分からないが、小説では主人公が顔を見ており、名前はケラー

・映画では主人公は休憩所のレストランでサンドイッチと頭痛薬を注文するが、小説ではビールを注文する。飲酒運転である

「フォーリング・ダウン」レビュー(池田)

フォーリング・ダウン(原題:Falling Down)

 

 

予告編

1993年アメリカ

監督:ジョエル・シュマッカー

脚本:エブ・ロー・スミス

製作:ティモシー・ハリス、アーノルド・コペルソン、ハーシェル・ワイングロッド

音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード

撮影:アンジェイ・バートコウィアク

出演:マイケル・ダグラス、ロバート・デュヴァル、バーバラ・ハーシー、レイチェル・ティコティン、チューズデイ・ウェルド、フレデリック・フォレスト他

あらすじ

真夏のロサンゼルス。渋滞に巻き込まれたD-フェンス、本名ウィリアム・フォスター(ダグラス)はクラクション、怒鳴り声、エアコンの故障、車内のハエに苛立っていた。突然車を乗り捨てた彼は周囲のドライバーに「家に帰る!」と言いその場を立ち去る。世の中の理不尽、不満に徹底的に抗う彼の暴走が始まった。

 

レビュー

『ウォール街』(1987)『ブラック・レイン』(1989)『氷の微笑』(1992)などで有名なマイケル・ダグラス主演のサスペンス・スリラー。

誰でも普段生活していると「ムカつく」「イライラする」「納得できない」などの不満・怒りが湧くことがあるだろう。本来ならそれを理性で抑えるが、この映画の主人公は実行に移す。ぼったくる店、金品要求のチンピラ、融通の効かないファストフード店、差別主義者、意味のない道路工事など、不快にさせるもの、邪魔するものに徹底的に武力で対抗し、自分の意見を押し通す。

 

 

「~してやりたいけど社会的に、人としてまずいなぁ」と思うことを主人公は平気でやるので、見ていて爽快である。しつこいチンピラをボコボコにするシーンはダグラスを応援したくなった。ファストフード店での主張も共感できる(マ〇〇ナ〇ドに皆が思っていることだと思う)。使用する武器がわらしべ長者的にグレードアップしていくのが面白かった。

彼を追う刑事役に、『ゴッドファーザー』(1972)『地獄の黙示録』(1979)『ディープ・インパクト』(1998)のロバート・デュヴァル。

 

ラストはちょっと悲しい。(決して感動的というわけではない)

世の中に不満を抱えている人にお勧めの作品。