2024年度春新歓ブログリレー#7

6829b9fa5593cbd1b6c2127ae84a083c15ba92089b6d7323dca37a2823511bc5

皆さま、おはこんばんちわ。北大映画研究会の萱野です。
私が今回紹介する映画は2018年公開のドキュメンタリー映画「太陽の塔」です。
こちらはタイトルの通り、岡本太郎の作品「太陽の塔」をテーマにして、現代社会と岡本太郎の思想を、芸術家、歴史家、社会研究家などの様々な視点から読み解いていくドキュメンタリー映画となっています。
正直、他のブログリレーで紹介されている作品と比べると、エンタメ性は見劣りします。しかし私は、この作品は日本の未来を担う人間が向き合うべき作品の一つだと考えています。
太平洋戦争の敗戦の後、特需景気と高度経済成長による経済的な復興がなされ、一見すると「敗戦を乗り越えた」「発展を遂げた」ように見える日本、大阪万博で「人類の進歩と調和」を掲げた日本に、岡本太郎は「日本は、人類は進歩も調和もしちゃいない」というメッセージとともに太陽の塔をぶち当てます。
経済的発展の影に置いていかれた「日本」というもののアイデンティティと、太郎の見ていた芸術という「人類」のアイデンティティ。
太郎が太陽の塔に込めた、人類が核という「黒い太陽」を持つことへのメッセージ。
発展の限界を迎え、停滞しつつある現代において、「無意味な畏怖」を人々に与え続ける太陽の塔を読み解くことで、過去、現在、そして未来が、科学や歴史にとらわれない、一本道でない方法で、けれど確かに繋がれていきます。

この映画の魅力は、観て、そして自分の頭で考えることで味わえるものだと思います。他の映画では絶対に味わえない知的な快楽をぜひ体験して頂きたいです。

オマケ:私がこの映画を観たのは、16歳、高校2年生の、修学旅行の前日の夜、もうなくなってしまったスガイディノス札幌という映画館でした。当時理系だった私は、信じていた科学というものの脆さに気付かされ、いつか文系に進もうと決意し、そして今に至ります。映画を観た次の日からの修学旅行で、実際に太陽の塔を見ることになって、新幹線の中でひたすらこの映画のメッセージについて考えていたことを覚えています。
私の人生を変えてくれた映画です。ぜひご覧ください

追伸:オマケがあるから追伸は書かなくてもいい気がしますが…。皆様は太陽の塔を実際に見たことはあるでしょうか?あれ、思ってるよりデカいんですよね。けっこう距離が離れててもかなり大きく見えます。そりゃあ怖くて解体できないよなぁ…って、実際見たら感じると思います。

2024年度春新歓ブログリレー#6

MV5BMTA1ODUzMDA3NzFeQTJeQWpwZ15BbWU3MDgxMTYxNTk@._V1_
皆さま、おはこんばんちわ。北大映画研究会の萱野です。
私が今回紹介する映画は「アバウト・タイム 愛おしい時間について」です。

あらすじ:21歳の誕生日、ティムは父から、代々一族の男性にタイムトラベル能力があることを知らされる。そんな能力に驚きつつも、彼は時空を旅して恋人探しを始める。(Netflixより)

あらすじの通りの、ラブロマンスコメディですが、あらすじからは想像もできないほどの感動が、皆さんを待っています。
映画の前半は主人公のティムとヒロインのラブロマンスパート、そして後半はティムの家族をめぐるタイムトラベルと絆の物語という構成です。他のラブロマンス映画に比べて、主人公とヒロインだけのパートの比重が軽いため、ラブロマンスが苦手な方でも見やすい作品だと思います。
前半で恋愛ごとは一区切りつく分、後半の家族ドラマの比重が大きくなっており、特にティムとお父さんのドラマは感動必至です。
正直、映画を観たあとの感覚は「バイオレットエバーガーデン」を観た後に近いほど、心に訴えかけられる映画だと思っています。
正直、この映画が好きすぎて何をどう説明したらいいか分かりません。映画で泣いたことがなかった私が、終盤の親子のシーンでボロボロ泣いてしまうような素敵な映画なんです…
特にお父さん役のビル・ナイさんの演技が伏線に富んでいて素晴らしく、親子モノに弱い方には間違いなく刺さると思います!
ぜひ、ラブロマンスというジャンルに先入観を持たずに観て頂きたい傑作です!

追伸:皆さんは親子モノってお好きですか?僕はとにかく親子の感動ストーリーに弱く、バイオレットエバーガーデンでも母娘の話で泣きかけました。自分の体験としての、昔の両親への感謝と、少しの後悔が、親子モノを何より魅力的にするものかな…なんて考えたりしています。

2024年度春新歓ブログリレー#5

i-am-a-ghost2年生の手束壮吾と申します。

自分はホラー映画が好きでいつも「これ絶対寝る前思い出すやつだ…」、「何でこれ1人で観ちゃったんだろ。」、「お風呂入りたくないわ…」などとビビりながら楽しんでいます。ここで読者の皆さんは恐らくこう思うでしょう「お前ホラー苦手だろ」と。そうです、私はホラーは苦手です。ホラー映画鑑賞後はディズニー映画を観たり心温まるような映画を観たりして癒されています。でもめちゃくちゃ好きなんです。これは辛い食べ物のようなもので得意ではないけどクセになる、好きだ。そんな感じです。

そんなホラー苦手な私が紹介する映画は「私はゴースト」です。この映画は2012年にアメリカで作られたもので監督は H・P・メンドーサ、ジャンルはホラー/ミステリー。
ではなぜ私は「私はゴースト」という映画を選んだのかを説明させていただきます。それはこの映画が今まで観てきたホラー映画の中で圧倒的に異質だからです。好きなホラー映画を紹介しても良かったのですが(ちなみにマリグナントです。)読者の皆さんには経験したことの無い恐怖を味わっていただきたいと思いました。この映画の怖さはお化け屋敷のようなびっくりや視覚的な怖さみたいに五感から得られる情報による恐怖ではありません。もっと深い根源的なもので、我々は当たり前すぎて気が付かない無意識下にある恐怖でありそれを刺激してくるからこの映画は異質なんです。

あらすじ
主人公は毎日同じ生活を繰り返すエミリーという女性。ある日エミリーは家の中で声が聞こえます。それは「私は霊媒師で、あなたはこの部屋で殺された幽霊だ。この家の持ち主(エミリーの後に住んでいる人たち)が怖がるから成仏して欲しい」という内容でした。そしてエミリーは成仏するために自分の死因について調べていく。つまり死因が分からないことによって成仏できない幽霊が自分がどうやって死んだかを解明していくお話です。

この映画はなんと主人公が幽霊なんです。この設定は斬新でとても面白いですよね。その上登場人物はほぼ1人で、霊媒師に関しては声のみ。そして見ている我々も幽霊であるエミリーと同じ視点なので普通の映画と違ったり死因を解明していくミステリー要素もあったりして面白い点がいくつもあります。

ただあらすじを読んで「これ怖くないじゃん、こいつ何言ってんの」って思った人もいると思います。またこの映画を観たことある人も正直そこまで怖くなかったと感じた人もいると思います。ここでなぜ私はこの映画が怖いと感じているかを伝えたいと思います。それは死=救済という概念を壊したところです。エミリーは死んだはずなのに毎日1人で同じ生活を過ごしていました(外へ出ることは不可能)がこれは終わることができない、永遠にこれを繰り返すことしかできない、逃げられない。その上霊媒師が現れるまで幽霊だど自覚することもできないし、自覚できても死因がわかるまで成仏ができない。つまり例え死んだとしてもて苦しみから逃れることができるとは限らないということです。これめちゃくちゃ怖くないですか。現代では辛い現実から逃げたくて自殺する人もいると思いますがこの映画はそんな人たちを完全に否定しています。苦しみから逃げた先、地獄というこの悪魔的発想は死を甘く捉えているようなある一定の現代人に一石を投じる要素があり死ぬことは改めて怖いことだと気づかせてくれます。ある意味自殺防止にもってこいの作品かもしれませんね。

「私はゴースト」の上映時間はなんと76分とかなり短め。そしてAmazonプライムで視聴可能とかなりお手軽な作品となっております。またミステリー色強めでグロテスクな描写なくかなり観やすいと思います。少しでも興味が湧いていただけたら是非挑戦してほしいです。
ただこの映画は全員におすすめできるかと聞かれたら答えはNOです。好き嫌いがかなり分かれる作品だと思います。冒頭20分はほぼ同じ映像の繰り返し、会話も少ない、極めつけには終盤の〇〇。謎が多く含みを持たせたようなシーンが多いため鑑賞後よく分からないで終わってしまう人もいると思います。ただ私は非常に面白いと感じましたし映画が好きな人やホラーが好きな人、ミステリーが好きな人など色々な人に是非観てほしいと思ったので紹介させていただきました。
私の駄文にお付き合いいただきありがとうございました。

2024年度春新歓ブログリレー#4

MV5BMmQ1NzBlYmItNmZkZi00OTZkLTg5YTEtNTI5YjczZjk3Yjc1XkEyXkFqcGdeQXVyNTAyODkwOQ@@._V1_FMjpg_UX1000_

2年法学部の佐藤です。映画研究部には去年の秋に入部しました。

今回のブログリレーでは、僕が一番好きな映画『アメイジング・スパイダーマン2』を中心に、「スパイダーマン」の映画の数々について紹介していきます。

『アメイジング・スパイダーマン2』の話題に入る前に、「スパイダーマン」とはそもそも一体何なのか、どんな映画があるのかについて説明したいと思います。マーベル・コミックにて、1962年に初登場したスパイダーマンは、シリーズとして長期間続き、映画化も幾度もされました。主人公のピーター・パーカーは放射性のクモに噛まれ、それ以来世界でたった一人のスパイダーマン。超人的な力を得た彼は、初めはその力を利己的な方向に使い、それが遠因となって叔父を死なせてしまいます。叔父の死に際の言葉である、「大いなる力には大いなる責任が伴う」という言葉を受け、以後は顔を隠したヒーロー「スパイダーマン」として、ニューヨークの市民を数々の危機から救っていきます。

ヒーローとしての活動と、高校生/大学生としての活動は、両立しづらいもの。ピーターには恋人ができますが、その関係はなかなかうまくはいきません。正体を隠して、恋人を危険から遠ざけるか、正体を明かして、恋人のそばにいるか。ピーターは葛藤します。またヴィラン(敵役)であるグリーン・ゴブリンやドクター・オクトパス、ヴェノムなどとの戦いを巡って、家族・恋人を危機にさらしたり、友人と対立したりしてしまいます。このうまくいかなさ、世知辛さが、『スパイダーマン』の魅力といっても過言ではありません。

前述したように、スパイダーマンは頻繁に映画化されています。2002年スタート、ホラー映画を数多く手がけたサム・ライミ監督、トビー・マグワイア主演の『スパイダーマン』3部作。2012年スタート、マーク・ウェブ監督、アンドリュー・ガーフィールド主演の『アメイジング・スパイダーマン』2部作。2016年スタート、ジョン・ワッツ監督、トム・ホランド主演の『スパイダーマン/ホームカミング』から始まる3部作は、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の中に組み込まれており、アイアンマンやドクターストレンジといったほかのヒーローとの共演が見られます。

それでは本題、『アメイジング・スパイダーマン2』について紹介していきましょう。ネタバレを含みますので、悪しからず。

この作品は、『アメイジング・スパイダーマン』の続編として、2014年に公開されました。前作にてピーターは、同級生のグウェン・ステイシーと恋仲になりましたが、警官である彼女の父ジョージは死に際に、「グウェンに危機を及ぼすな」と言い残しており、ピーターはグウェンとの距離の取り方に苦しみます。またピーターは幼少期の親友ハリー・オズボーンに再会しますが、彼は病魔に侵されており、治療の為にスパイダーマンの超人的な力を狙っており、ピーターとハリーは対立していきます。さらにピーターは、幼少期に謎の死を遂げた両親に関して複雑な感情を抱いており、それが原因で残された家族である叔母ともギクシャクしてしまいます。この三重苦の状況、ピーターはさらにヴィランである「エレクトロ」との対決も余儀なくされます。両親の謎を紐解き、グウェンと復縁したピーターは、エレクトロを命からがら倒します。しかしエレクトロの背後にいた黒幕、グリーン・ゴブリンことハリーの奇襲を受け、ピーターはグウェンを寸でのところで助けきれず、死なせてしまいます。蘇るグウェンの父の言葉。ピーターは数ヶ月もの間、意気消沈します。しかしその間にもニューヨークには市民の助けを呼ぶ声が止みません。グウェンの生前の言葉、「孤独だと感じる日もあるでしょう」「そんなときにこそ、希望が必要なのです」を聞いたピーターは立ち上がり、ニューヨークの希望として再び戦いに身を投じるのです。

なんといっても、このラストシーンが素晴らしいのです。この映画のすべては、このラストシーンのためにあるといっても過言ではありません。スパイダーマンのいない街、暴れるヴィランに少年が果敢に立ち向かいますが、勝てるはずもありません。その場に現れたスパイダーマンは、「あいつは僕が倒すから、君はお母さんを守って。いいね?」とヴィランの前に立ちはだかり、攻撃を仕掛けます。その姿はニューヨーク市民の希望。悲しみに打ちひしがれたスパイダーマンは、帰ってきたのです。まさにヒーロー復活、ヒーローかくたるべし。

さらに特筆すべきは、音楽です。本作で音楽を担当したのは、『パイレーツ・オブ・カリビアン』『ダークナイト』『インターステラー』などで知られるハンス・ジマー。スパイダーマンを象徴するヒロイックな音楽と、エレクトロを象徴する重低音でリズミカルな音楽が対比的で、とても印象に残るものになっています。

この作品には、次作に向けての伏線が多くあります。ハリーに接触する謎の男、原作のヴィランであるドクター・オクトパスやヴァルチャーのものであると思われるスーツの登場などなど。ですが『アメイジング・スパイダーマン3』は製作されませんでした。というのも、当時『アメイジング・スパイダーマン2』は興行的にあまり成功せず、一方、上述したMCUが『アベンジャーズ』などの作品によって盛り上がっていました。「スパイダーマンをまた仕切り直してMCUに合流させよう」との判断でしょうか、『アメイジング・スパイダーマン』シリーズは打ち切られ、『スパイダーマン/ホームカミング』が製作されたというわけです。

そんなわけで、『アメイジング・スパイダーマン』の世界のピーターがその後どのような人生を辿ったかは、我々の知るところではありません。ですが、MCU版スパイダーマン3作目、『スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム』にて、なんとなんと、まさかの『アメイジング・スパイダーマン』版のピーターが登場。彼のその後について仄めかされているほか、エレクトロとの再びの対峙や『アメイジング・スパイダーマン2』を意識した粋な演出など、ファンには感涙ものですが、いまや幻となってしまった『アメイジング・スパイダーマン3』を見たい! という声を挙げるものは少なくありません。かく言う私もその一人です。