チェホフスキの「眼」(ナカミチ)

昨日のブログにも書きましたが、ポーランド現代映画セレクションに合わせたワークショップがかでる2・7で開かれ、自分も参加してきました。ワークショップに参加した者の使命は参加出来なかった人たちに内容を伝えることである!(そして自分の中での理解力を高める!)と息巻いてカメラ携えてプラッと行ってきました。
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ワークショップ会場。ホワイトボードの横には大きく「災い」の文字が。ホワイトボードにも「WAZAWAI」と書かれています。
ゲスト講師はポーランド人ドキュメンタリー作家、ヴァルデマル・チェホフスキ監督。チェホフスキ監督は1952年ソスノヴィエツ生まれで、テレビ・劇場問わず様々な場で数々のドキュメンタリー作品を残した、ポーランドドキュメンタリー界のリーダーとも呼べる人物です。日本ではあまり有名ではないのですが、ポーランドでは若手の育成にも力を入れており現在でも精力的に製作をしています。
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講師のヴァルデマル・チェホフスキ監督。
まず監督は「ドキュメンタリーとは何か」ということについての自説を述べることから始めました。監督にとってドキュメンタリーとは製作者と観客の間の「疑問」によるコミュニケーションだそうです。製作者は作品によって観客に疑問を投げかけるが、同時に観客も作品を観た後では製作者に対して疑問を投げかけることが出来る。このようなコミュニケーションを経て、今まで見えなかった何かが見えるようになるのです。
監督は駐日ポーランド大使館の方から「今回の東日本大震災の被災地に向かうが同行しないか」と誘われ、福島県や宮城県を巡り、その様子をカメラにおさめました。そこで撮影した映像は『WAZAWAI』(2011年、27分、未完)としてまとめられ、ワークショップで上映されました。タイトルに「災い」を選んだ理由として監督は、「災い転じて福となす」という日本語のことわざに惹かれたためだと答えていました。ポーランドはチェルノブイリ原発事故があったウクライナのすぐ近くにあり、今回の福島第一原発の事故が他人事のように思えなかったと語っていました。
津波によって打ち上げられた漁船が田んぼのど真ん中に転がっていたり、商店街のど真ん中に転がっていたり、その被害は自分の想像以上でした。しかし自分にとってより衝撃的だったのは、自分の家が半壊したことを笑いながら語る女性の姿でした。「笑うしかない」というよりもむしろ、「もう片付けるしかない」といった諦めからの活力に満ちていて、衝撃を受けました。
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もう一本『ヴィンツェンスの足跡を追って』(57分)の上映がありました。こちらは時系列順に映像を並べた『WAZAWAI』とは打ってかわって、構成力で見せるドキュメンタリー作品でした。ポーランドの文学者であり思想家のヴィンツェンス(フルネームメモれませんでした。無念)の生涯を、彼を知る人たちへのインタビューによって明らかにしていく作品で、ヴィンツェンスの生まれ育ったウクライナのフツル地方の雄大な自然が美しい作品でした。こちらの作品は製作に10年を費やしており、それだけに密度の高い作品でした。そのせいなのか自分としては非常に難しく感じ、若干退屈な印象を受けました。恐らくヴィンツェンスの著作に一度も触れたことがないのも原因なのでしょう。国外での公開を想定していないと思われるので仕方ないでしょうが、ヴィンツェンスが著した作品の雰囲気が読み取れず、ドキュメンタリー作品としては少々説明不足かもしれません。
ワークショップ全体を通しての感想としては、もうちょっと踏み込んだ話が聞きたかったかなという感じでした。映像専攻の学生や、映像業界の人は比較的少なく、一般の方が多かったので作品の内容の方に話が集中し、自分が一番聞きたかった「ドキュメンタリーの本質」の部分にはほとんど触れずに終了してしまった感じがします。
それでもドキュメンタリー作品において音楽を使う重要性や、ドキュメンタリー作品の構成法の応用など興味深い話もたくさんありました。これで参加費が無料なのは安すぎる!(作品も観られるし!)
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映研から参加したのは自分とイバヤシの2名だけで若干寂しいかなとも思いましたが、時間的に仕方ないですね。このようなチャンスは何度もあると思うので、出来るだけ広範囲でアンテナを張ってあちこちに行けば貴重な体験が得られるはず。
意識の高い就活生のようなブログになってしまい読み直す気がなくなってきたのでそろそろ終わりにします。明日のポーランド映画が楽しみ。余力があれば成瀬巳喜男の『放浪記』を観て寝ます。おやすみなさい。

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