第三帝国の終わり(ツシマ)

祖母からの仕送りが入り、金銭的にも余裕が出来たので、「この天気だし、自転車直してもらって風になりますかな」などと馬鹿丸出しの独り言を言いながらアパートの自転車置場に行ってみると…
自転車がない…
チェーンが切れていたか、外れていたかしていたので盗まれるはずもないし、何より自転車の数が明らかに少なくなっている…
これはあれだ、廃品回収だな。
僕の自転車は名前をヒトラーと言う(愛称ヒッちゃん)。ホーマックで買った何てことのない普通のママチャリを、5~6時間かけミリタリーカラーに染め上げた自慢の自転車だった。パンクはしょっちゅうだったけど、その都度絆は深まった。再帰不能かと思われたホイールの歪みも乗り越えてきた。自転車屋さんの人に「もう乗り換えた方が安上がりだよ」と言われた時すら、ヒトラーを手放す事など考えもつかなかった。
何でもっと早く気付かなかったんだろう?何でもっと大切にしてあげなかったんだろう?こんな春の心地の良い日にヒトラーに乗って…緑や空や花が風に揺られて…どこまでも行けただろうに…口惜しくて仕方ない。
今日は酒を飲もうと思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください