2024年度春新歓ブログリレー#2

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法学部2年、映研副部長の田仲と申します。今回私が紹介する映画は「シャークネード」シリーズになります。

今日世界には非常に多くのサメ映画が製作されており、その中で真にその完成度や面白さを正当に評価し得る作品が「ジョーズ」と「ディープブルー」くらいしか存在しないことは皆さま御周知のことかと存じますが、この「シャークネード」シリーズはまさにその「正当に評価し得ない」作品の代表格であります。荒唐無稽な設定、支離滅裂な脚本、大根演技、PS2レベルのスーパー低クオリティCGなどなど、貶すべき点を挙げればキリがありません。ではなぜそんなゴールデンラズベリー賞ものの映画を皆さまにお勧めするかと言いますと、それはひとえにこの作品が言わば「カルト的魅力」に溢れているからです。

そもそもカルト映画というのは、万人受けはしないが一部の熱心なファンが狂信的に繰り返し見ているような映画のことを指すものです。世間でよく言われるものとしては、「エル・トポ」、「イレイザーヘッド」、「太陽を盗んだ男」、「ブレードランナー」などでしょう。ですが上に挙げたのはどれも考え抜かれて作られた一級の名作であり、これだけでカルト映画の全てを語ることはできません。カルト映画とはすなわち怪作であり、そこにはクソ映画という別の側面があります。

エド・ウッドという監督をご存じでしょうか。私もまだ実際に作品を見たことはないのですが、しかしカルトと言えばむしろ真っ先に思いつくのはこの方です。映画をこよなく愛していたとされるエド・ウッドですが監督の才能はめっぽうなかったようで、作り上げた映画はことごとく低評価の嵐を受け、ハリウッドでは見向きもされませんでした。そのクオリティは(悪い意味で)凄まじかったようで、映画人をして「ゴミのような映画を撮る監督は山ほどいるが、映画のようなゴミを撮るのはエド・ウッドだけだ」と言わしめた御方です。ですがそのあまりのクソっぷり、低クオリティぶりから没後にじわじわと人気を集め、今では稀代のクソ映画監督として一部のシネフィルから熱狂的に支持されています。ファンの中にはクエンティン・タランティーノやサム・ライミ、ティム・バートンなど名だたる映画人も名を連ね、特にティム・バートンに関しては好きが高じて彼の伝記映画(しかも主演はジョニー・デップ)まで製作している始末です。このように世紀のクソ映画というものは時に世紀のカルト映画足り得るわけでありまして、他にも例を挙げるならば「シベリア超特急」や「アタック・オブ・ザ・キラートマト」、「ザ・ルーム」などがあるわけですが、ここで話は「シャークネード」に戻ります。ここまで読んでいただいた方ならばお気づきでしょうか。そう、「シャークネード」もまたカルト的側面を持つクソ映画なのです。

前提として、サメ映画(B級に限る)というジャンル自体がそもそもカルトではあります。カルト映画に明るくない方でも、サメとタコが融合した「シャークトパス」や砂浜を泳ぐ「ビーチ・シャーク」、ケルベロスの如き3つの頭を備えた「トリプルヘッド・シャーク」という単語を聞けば、ああ絶対クソ映画なんだろうけど好きな人は好きそうだな、という感覚を共有していただけるかと思います。かく言う私も未だその境地には辿り着いていない現状ではありますが、しかしそうした深部のサメ映画の世界への道のりを切り開く入り口こそがこの「シャークネード」なのであります。

遅まきながら、本シリーズの概要をご説明いたします。「シャークネード」シリーズは2013~18までに全6作が製作されたサメ映画であり、主なストーリーとしては洋上で発生した竜巻が付近に異常発生していたサメの大群を巻き込み、サメをまき散らしながら上陸する恐るべき災害シャークネードと、その脅威に立ち向かう主人公フィンとその一家の戦いを描くSFパニック・ディザスター映画になります。自分でも書いていて馬鹿馬鹿しくなってきましたがこのシリーズの阿呆さはこんなものではありません。一作目は普通のつまらないB級映画という雰囲気だったのに対し、二作目ではバズって予算が増えたからかニューヨークを舞台にチェーンソーでサメを切りまくるおバカ・コメディ映画となり、三作目以降はさらに加速した悪ノリで見る者すべてを置いてけぼりにします。そのしっちゃかめっちゃかぶりときたら他に勝るものはなく、宇宙を泳ぐサメに呑み込まれたと思ったらそのサメの体のおかげで大気圏再突入を生き延びたり、妻がサイボーグに改造されたり、サメが炎や電気を纏ったり、おまけに核燃料を呑み込みヌークリアネードとなったり、ローマ教皇(もちろん偽物)からチェーンソーを授かったり、しまいにはシャークネードの渦の中心のエネルギーを利用して時空を超えたり、もう何が何だか分かりません。読者諸賢も理解が追い付いていないことでしょう私もです。

とまあこのように冷笑すら湧いてくる悪ノリを連発しまくる本シリーズではありますが、やはり毎回受けがいいのも相まってかこの手のB級映画の中ではかなり潤沢な予算をもらっているようで、(お世辞にもいいとは言えませんが)クオリティ自体は意外にも悪くはありません。日本で言えば仮面ライダーくらいの出来でしょうか。また一作目では見るに堪えない棒演技だった役者勢も、二作目以降からはかなり演技力が向上しており、十分鑑賞に堪え得るレベルです。さらにダン・フォグラーやドルフ・ラングレンなど意外な人物のカメオ出演や多彩なロケーションなどで毎度楽しませてくれるのも好印象です。脚本も非常に無茶苦茶ですがその中には家族愛という一貫したテーマがあり、最後は一作目からの伏線を回収して非常に綺麗に収まるため、シリーズを通してみると思いのほか感動できます。

以上のように、荒唐無稽なサメ映画ながらも悪くないクオリティとコメディ・センスで笑いを取りに来る本シリーズは、サメ映画の入門としてはこの上なく最適な選択肢であります。名作映画を見ることはもちろん何にも代えがたい楽しみではありますが、たまにはそうした真っ当な評価から外れた、奇想天外な世界を覗いてみるのはいかがでしょう。サメ、B級、カルト。それらは決して一般受けはしませんし、文学的映像的評価に値するものでもありません。ですがそれもまた映画であり、そこには少なからぬファンがいます。そうした世界に触れてみるというのも、存外悪いものではないかもしれません。これを読んでいただいている皆さまの心の中で、少しでもサメ映画の世界への興味が芽生えておりましたら、私は大変光栄に存じます。余談ですが、「シャークネード」の一作目は色目抜きにシンプルにつまらないので、まずは二作目の「シャークネード カテゴリー2」からの視聴をお勧めします。その後にもっとサメを求める心が出てきたなら、どうぞ一作目からご覧ください。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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