三年の豊岡です。
私が紹介する映画は「東京幻夢」(実相寺昭雄、1986年)です。
ある写真屋に現れた昔風の女、その姿に魅せられたカメラマンの男は、その女に魅せられ後を追うが………
といった、内容です。説明するのは難しいので観てください!
さて、ここから考察です。女は昔の東京(明治、大正期)を象徴しており、カメラマンは昔の東京に憧れを持ち、それを追うものを象徴しているように思います。理由はいくつかあります。まず、冒頭、昔の東京の映像をbgvとして流しながら人形を塗る男、それとは対比になるような近代的な建物の描写があります。そして、男が住んでいるところや好んで写真撮影する多くの場所は昔の面影を感じさせる東京の景色です。映像の中では、近代的建築物と古風な建築物の対比は随所に見られます。女の幻影を見かける場所は常に古い館や紙芝居など、昔風の場所であり、女は常に和服を着ています。また、象徴的に挿入される柱時計や、最後のお地蔵さんもまさしく「無常」を演出しています。老婆が例の女に見え、写真にそのように映ったのはまさしく、その老婆が明治、大正期の東京を生きたからでしょう。追い求めていた女の老婆となり、変わり果てた姿、すなわち追い求めていた昔の東京の現代の変わり果てた姿、時は戻せないことだと認識し、男は挫折、絶望したのでしょう。それが最後の爆発であるように思います。実相寺さんの東京へのイメージが凝縮されていますね。
以上のようなことを台詞を使わず、音楽(クロイツェル・ソナタ)と、美麗な映像で魅せる実相寺さんの感性は素晴らしいですね。