どうも、2週間ぶりの小竹です。最近忙しい上にトラブルが重なりなかなか時間が取れませんでしたが、やっとブログが書けそうです。でも囲み文字が上手く打てない……。
さて今回の話題は前々から書きたいと思っていたMCバトルについてです。まずは簡単にMCバトルの説明から行きましょう。
MCバトルとはステージ上のラッパーが交互にラップを披露し、そのラップに勝敗をつけるというエンターテインメントです。スカパーで放送されている「高校生ラップ選手権」から人気に火が付きはじめ2015年からテレビ朝日で「フリースタイルダンジョン」が放送されたことにより完全にブームとなりました。ちなみに僕がバトルにハマりだしたのは去年から。全くのにわかなので詳しい人はこの記事に怒らないでくださいね。
今回は僕が特にお気に入りのバトルを紹介します。少しでもバトルの面白さが伝わったらうれしいです。
では早速いきましょう。今回紹介するのは「T-tongue VS Amateras」です。バトルにおいては「文脈」が非常に重要なのでまずは前提を説明しますね。このバトルは22歳以下限定の大会の中の一試合です。まあスポーツで言うと学生大会みたいなものです。先行のT-tongueは高い「ライミングスキル」(韻を踏むこと)と熱い「バイブス」(勢い、雰囲気のようなもの)を武器とする若手のホープ。対する後攻のAmaterasは慶応大学に通い、「金持ちキャラ」という特殊なキャラを貫くシーンの異端児。この二人のバトルはわかりやすくMCバトルの面白みが出ていると思います。
それでは、1バース(ひとまとまりのラップ)ずつ解説していきます。動画と書き起こしを合わせて確認してもらえるとより楽しめるはず!
(バトルは1:00~)
先行 T-tongue 1バース目
金持ち自慢はまじでくだらねえ 親の金だろうが 自分で稼げやボケが
わかってねえな NORIKIYOのLIVEで何を感じた?
仕事しろ 速攻で始める どこ見ちゃってるのかな
Amateras結局宗教ぽいか 俺がマイク握れば銃刀法違反
(赤字はライミングの部分)
いきなり相手の持ち味である金持ちキャラを攻撃します。これがバトルの基本中の基本である「dis」ですね。どのくらい攻撃的にいけるか、また切り口の新鮮さが求められます。次にこの日、バトルの合間にLIVEをしていた先輩ラッパーの名前を出しつつ、最後は七文字という長いライミングを決めています。この最後のライムはAmaterasの元ネタともいわれる呂布カルマまで見据えたような攻撃力の高いものです。
後攻 Amateras 1バース目
「金持ちなんて気にしない、お金より大切なものが少しでもあったらばいい」
なんでKOHHのサンプリングしてるのに沸かねえんだmother fucker
親が金持ってる?だったら自分の親を恨めよ
俺は金があるの 親のおかげ感謝
対する後攻はKOHHというラッパーの「貧乏なんて気にしない」という曲をもじって応戦。Amaterasからすれば「金持ちキャラ」をdisられることは想定済みであるため、余裕のある感じですね。この部分のように他の曲などから引用することを「サンプリング」、また相手の言ったことに対し即興で言い返すことを「アンサー」と言います。このバースはサンプリングとアンサーが組み合わさって良い感じ。そして最後はいかにもAmaterasらしい視点で着地。
先行 T-tongue 2バース目
親なんて恨まねえ 授かった命それだけに感謝してるぜ
間違いない命のかけら 赤目でふかした緑の種だ
お前とは違うところ そこで這い上がってるだけだわ
結局しゃべるだけ スキルもねえ ジェスチャーがうぜえんだわボケが
対して先行は道徳的な返しでアンサー。続けてまたも七文字のライミングを披露します。ここで言う赤目とはドラッグによって充血しているということであり、緑の種とはドラッグそのもの比喩表現です。このように犯罪やドラッグのにおいを感じさせるのもバトルにおいて重要になることがあります。後半言うことに少し詰まってしまっているのが残念。
後攻 Amateras 2バース目
うるさいうるさい 這い上がってこい 俺は上から見下ろしてるよ
さっきヒダさんが時間をまく その間に俺は金をばらまく
ポケモンGOやるやつらばっか
さっき繋げたACEさんが捕まえたヒトカゲ 俺は生まれも育ちも白金
またも自分のキャラに沿った視点からアンサー。その後も自分のキャラを保ちつつラストにはライミングも披露します。このライムは四文字とT-tongueよりも少ないですがキャラという要素が付属していることにより、同等かそれ以上に客を沸かせているのが面白いですね。
先行 T-tongue 3バース目
どうでもいいポケモンGO うちは貧乏米騒動
お前とは違え またはめてくだけ 楽しくなってきたかなAmateras
言葉でさらす 言葉がある俺一発かます
スキルは結局カルマさんの分身 ディメンターに送るアズカバンの囚人
いきなり相手のバースで出た言葉を拾ってライミング。これにはより即興性が求められます。そして最後はAmaterasが物まねしていると度々揶揄される呂布カルマというラッパーの名前を出しつつ驚異の十文字ライミング。T-tongueは安定感がありますね。
後攻 Amateras 3バース目
俺はカルマさんの分身じゃないよ 諭吉の分身だよ
生まれも育ちも慶応義塾 そこらへんの奴らとはケタが違う
KREVAが慶応とか言ってるけどあいつは大学から入ってる 俺は幼稚舎 生粋のK-boy
B-boyじゃないよ B-boy?No,no 慶応ボーイ
まずは茶化すようなアンサーで相手の沸きどころを無効化します。さらには超メジャーラッパーであるKREVAすらdisり自分の優位性をアピール。またB-boyをもじるくだりからはAmaterasが独特の「ユーモア」で観客の心をつかもうとしているのが伝わります。
先行 T-tongue 4バース目
慶応ボーイだかどうかも知らねえ 這い上がるのがHip-hopだろうがボケが
はなから上な奴見てねえ 結局矛盾が矛と盾
金持ちしかもさ男前 NORIKIYOさんガチャリどこの誰?
一網打尽 でも財布はいつでも(一文無し)
対するT-tongueも一貫したスタンスで応戦します。矛と盾からのライミングはバイブスやビート(ラップの後ろで流れている音楽)とも合わさって客も沸いていますね。ラストはこのバトルのビートである「一網打尽」という曲名を出し、客が「一文無し」というライムで声を合わせることを煽るような動きを見せます。しかし焦りすぎたためか上手くいってないのがもったいないですね。
後攻 Amateras 4バース目
うんうん一網打尽 大丈夫Amaterasいつもお金持ち
俺は韻踏まないよ 白金の街をセグウェイでビューン
俺はワイスリーのホワイト しっかりやってるから
こいつみたいに韻は踏まない汚れるから 俺は自分の足それは黒タクシー
ここまでくると完全にAmaterasはモードに入ってます。今までライミングでスキルの高さを見せつけてきたT-tongueをあざ笑うかのような言い回しが強烈。冒頭なんて一文字しか合っていないのに客はおもしろいように沸いています。そして最後は自分のキャラに沿った単語を連発してしめています。
このバトルは審査員のジャッジによりAmaterasの勝ちとなりました。勝因としては自分のバースのほとんどの部分において「金持ちキャラ」を貫き続けたことでしょう。T-tongueは要所で「固い」(文字数が多い)韻を披露していますが、そこにいくまでの部分が少しありきたりなdisに落ち着いてしまっているように感じられます。バトルにおいてライミングなどのスキルと同様にMCの「個性」や「ユーモア」が重要なことがわかる良いバトルでした。
このようにMCバトルはシンプルなルールながら「ライミング」、「フロウ(ラップの歌い方)」、「ビート」、「アンサー」、「サンプリング」、「dis」、「ユーモア」、「個性」など様々な要素が勝敗に絡んできます。MCバトルで勝つ方法は一つではなく、何を得意としているかもMCによって全く違うものであるということですね。この辺僕がバトルから抜け出せない理由のような気がします。
さて今回はMCバトルについて書いてきたわけですが、少しでもバトルの面白さ伝わったでしょうか?実は僕もMCお頭(おかしら)という名前で札幌のバトルに出たりしています。今年の目標は一曲PVを出すことなのでぜひご贔屓に。
ということで、映画とは全く関係ない話題かつ長文失礼しました。色んなものを好きな人がいるよということをわかってもらえたら嬉しいです。僕はT-tongueのようにいかつくもAmaterasのようにイケメンでもありませんがバトル好きの新入生が入ってくるのを待っています。もちろんHip-hopという音楽自体が好きな部員も結構いるので、そういう新入生も遊びに来てくださいね。
それでは、今日はこの辺で。
宗教ぽい→宗教行為だろ