こんばんは、ブログリレー木曜日担当の新川です。
去年のブログリレー企画ではみんなが好き勝手に書いていたので、先週は好き勝手に書いたのですが、今回はなぜか皆が皆映研の紹介をちゃんとやっていたため僕の記事が完全に浮いてしまい、「貴様ら俺を嵌めやがったな!!!」などと絶叫しながら握りしめた拳をキーボードにたたきつけていました。なので今回はおとなしく映画の話をします。
さて、というわけで本題に入りますが、今回は映画『プレデター』の話をしたいと思います。
プレデター(原題:Predator)
1987年アメリカ
監督 ジョン・マクティアナン
脚本 ジム・トーマス、ジョン・トーマス
音楽 アラン・シルヴェストリ
撮影 ドナルド・マカルパイン
主演 アーノルド・シュワルツェネッガー
あらすじ 南米バル・ベルデで行方を絶った重要人物奪還のためにジャングルに潜入する特殊コマンド部隊。だがゲリラを掃討した彼らを待ち受けていたのは宇宙から飛来した異星人プレデターだった。体を透明化させて周囲の風景に溶け込み、どこからともなく牙を向くプレデターに隊員たちは次々に倒されていく……
『ダイ・ハード』のジョン・マクティアナン監督、『ターミネーター』『コマンドー』のアーノルド・シュワルツェネッガー主演のSFアクション映画。余談ですが、架空の国家である”バル・ベルデ”はダイ・ハード2やコマンドーでも名前が出ています。個人的に大好きな映画なのですが、ある日一緒に観た部員に「最高だったろ!?」と興奮気味に聞いたところ渋い顔をされたので、どこが最高なのかを書いていこうと思います。ネタバレを含みますが、まあそういうのを気にする映画ではないので大丈夫です。
『プレデター2』、『プレデターズ』といった続編、『エイリアンVSプレデター』シリーズといった派生作品があり、名前を知っている人は多いと思いますが、意外と実際に観たことのある人は少ない作品の一つだと思います。長く続いたシリーズの最初の作品というのは、たいてい独特の魅力があるものなので積極的に観ましょう。
さて、肝心の『プレデター』の魅力ですが、まず一つに筋肉映画であるということです。主演の時点で予想がついていると思いますが、この作品は基本的には「シュワちゃんのアクション映画」です。まず冒頭、現在は軍を退役しCIA職員である戦友のディロン(カール・ウェザーズ)と再会した主人公ダッチ(シュワルツェネッガー)は、握手と同時に腕相撲を始めます。執拗にはさまれる隆起した上腕二頭筋のカットに、繰り出される小粋なセリフは強いアメリカ人そのものです。特に吹き替えの小粋な台詞回しや下品なジョークは、部隊の隊員たちのキャラを立たせるだけでなく、プレデターがそれを録音して使うにことよって大きな要素の一つになっています。中盤、ゲリラを制圧する際も、わざわざトラックを持ち上げたり、コマンドーめいた投擲で敵を倒したりと、筋肉ゆえの強さを披露します。また、ずっと熱帯のジャングルが舞台であるにもかかわらず、ダッチは映画が進むにつれてなぜか少しずつ服が脱げていき、終盤は(泥が塗られてはいるが)常に上半身裸です。プレデターに襲われて装備を失う前から、気が付くとどんどん上を脱いでいきます。
次に、プレデターというとてもユニークなキャラクターが魅力の一つとして挙げられます。エイリアンのような獰猛な未知の怪物でも、圧倒的技術力によってUFOのような兵器を操る宇宙人でもなく、人類よりはるかに高い技術力を持ちながらも、狩りを楽しみ、屈強な体格で白兵戦を好む野蛮な文化という斬新な宇宙人像は非常に面白いです。弱いものは狩りの対象から外したり、強い戦士に対しては刃物による近接格闘で敬意を示したり、ラストの録音したセリフのおうむ返しや不敵な笑いと自爆など、独特の価値観も魅力の一つです。造形としては、西洋甲冑のような仮面、アフリカの原住部族のようなアクセサリー、日本の武者を彷彿とさせる頭部など、世界中の”戦士”のイメージをうまく取り入れた部分が素敵です。
そして個人的に好きな部分に、随所で見られる”立場の逆転”が生み出す絶望感やカタルシスといった構造があります。序盤から中盤にかけて、ダッチ率いる特殊部隊は常に確かな実力とそれに伴う自信・余裕がみられ、ゲリラの基地をかなり一方的に制圧する、まさに精鋭部隊であり、”狩る側”でした。ところが、正体不明の姿が見えない謎の生物に、一人また一人と殺され始めると彼らは取り乱し、闇雲に打ちまくるような”狩られる側”の獲物になってしまうのです。前半に強さを強調したからこそ、強者という立場を追われたときに恐怖と絶望が増すのです。これは、基本的に絶対的強者として描かれるシュワルツェネッガーを起用していることによっても起こっています。前述したように、序盤はシュワちゃんのアクション映画なのですが、だからこそ、強者であるシュワルツェネッガーが、圧倒的力に太刀打ちできずに追い詰められたり、鍛え上げられた肉体が最大の個性の人間が片手で持ち上げられることによって、プレデターの強さと絶望感が増すのです。また逆に、姿が見えないプレデターに対して、恐怖で闇雲に撃ちまくるしかなかった場面があったことによって、泥を全身に塗ったダッチを見ることができないプレデターが闇雲にプラズマキャノンを撃ちまくるシーンでカタルシスが生まれるのです。
というわけで、とりあえずまだ観ていない人は『プレデター』を観ましょう。きっと楽しめるはずです。