番場でございます。大変遅くなりましたが、私のベスト2014年版発表しますよ。
10位 ホームレス理事長 退学球児再生計画
東海テレビ製作のドキュメンタリー。理事長を中心に、退学球児を集めたNPOに集まった人々の1年を追っています。このNPOは経営プランがガッタガタ。野球バカの理事長が金策に奔走するのですが、映画が進むにつれて状況はどんどん悪化していきます。明らかに善人、しかし不器用すぎる理事長が、次第に追い詰められていく様子ときたらもう。目を覆わずにいられません。前半はドキュメンタリーの被写体としてまだギリギリセーフでしたが、後半のあるシーンからはもう完全にアウト。あちらとこちらの垣根を豪快かつみじめに超えてきます。すごい。
9位 イコライザー
超つよいおっさんが女の子にたかるクソ野郎どもをぶち殺していく映画。こういう映画は好みなので余程のことがない限り楽しく観られるのですが、これは殺人マシーンものにしては全体的にものすごく落ち着いたイメージを受ける映画です。余計な台詞があまりない。アホに喋らせない。上品にさえ見えます。そのため時折挟まれるぶっ飛んだ見せ場が映える映える。そんな演出の緩急が見事でした。
8位 ホドロフスキーのDUNE
『DUNE』という、アレハンドロ・ホドロフスキーが監督する予定で結局作られなかった映画のドキュメンタリーです。関係者の証言を中心として制作過程を追っていきます。ホドロフスキー監督は聖いんだか俗なんだかよくわからない、宗教じみた作品の数々で有名ですから、気難しいおじいちゃんなのかと勝手に思っていましたが、サービス精神旺盛なアッパー系の人物でありました。彼の口から語られる制作エピソードはいちいち面白く、満員のシアターキノが観客の爆笑で揺れていました。ただ、面白い話が聞けるというだけの作品では当然ありません。企画がポシャって打ちひしがれるホドロフスキーが、その現実をだんだん肯定し前を向いていく様子、そして作られなかった『DUNE』に影響を受けた作品のモンタージュが登場する映画終盤は非常に感動的。
7位 フルートベール駅で
去年アメリカで、無抵抗の黒人が警察の行き過ぎた公務執行で死んでしまうという事件が何件かありました。この映画は2009年に起こった同様の事件の映画化です。iPhoneか何かで撮影された実際の事件の映像で幕を開けます。駅の構内で警官と若者が一悶着起こし、若者のうち1人が撃たれてしまうのです。そこから映画は時間を遡り、撃たれてしまうまでの彼の1日が描写されます。主人公はこれまで生活の足しにしてきたドラッグの売人業から足を洗って、まともな職に就きたいと思っております。真人間になりたいという意志を持ってるのですね。普通の映画ならその後葛藤を何とか克服して成長していきそうなキャラクターですけれども、この映画の場合は主人公が何をしても、どれだけグッとくる行動をしても、観てるこちらには冒頭の映像が焼きついていますから、なんとも寒々しい思いがするのです。演出の方も感傷的でなく淡々と突き放すように、主人公の犬死に感を煽っていました。犬死にといえば彼が文字通り死んだ犬を抱えるシーンが有りまして、黒人と犬って画面映えするなあと再確認しました。
6位 あかぼし
公開したの一昨年らしいですが、札幌公開が1月だったので入れました。新興宗教にハマってく母親とその息子の話です。息子と仲良くなる教団幹部の娘が素晴らしかった。外人なんですが、なんだかそこら辺に普通にいそうな子なんです。醜女ではなく、かといって美形というわけでもなく、そして絶妙に幸が薄い。好みです。
5位 オンリー・ゴッド
ニコラス・ウィンディング・レフン監督最新作。タイでグレーな仕事をしてるマザコンのジュリアンが、現地の警官で神の化身チャンの断罪を受け入れるという話。だと僕は思っております。前作『ドライヴ』はいつもと違って他人の脚本を使った結果大ヒットしましたが、今回は自分の書いた脚本ですね。案の定あらぬ方向にぶっ飛んでいます。なんせ説明的な台詞やシーンがほぼ無いのです。初見は何が何だかわかりませんでした。なんかタイ人の怖いおまわりさんが背後の何もない空間から刀を取り出して悪いやつをぶった斬ってる!しかも超面白い顔!うひょ~!おもしれ~!このような感想。観た後ずっと気になって、映画館やソフトで繰り返し観てしまいました。周富徳(もしくは猪瀬直樹)そっくりのおっさんが神である、という監督の意図が受け入れられるかどうかで印象が変わる映画ですね。神話なのかシュールギャグなのか。どっちにしろ面白いけど。エンドロールでこの映画がホドロフスキーに捧げられていましたけれども、このシリアスとギャグの境界を行く感じはホドロフスキーっぽいといえばぽいのでしょうか。
4位 新しき世界
『インファナル・アフェア』+『ゴッドファーザー』を韓国お得意のバイオレンス描写満載で撮った映画。こんなのもう十中八九面白い。しかもチェ・ミンシクが出ているとなれば。
3位 プリズナーズ
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品。娘を誘拐された男が、警察の対応に満足できず独自に犯人探しを始めます。ヒュー・ジャックマン演じる父親のキレっぷりが最高。独自調査で犯人認定した男をなんと拉致監禁、拷問して自白させようとするのです。男の顔は腫れてアンパンマンみたいになります。誇張ではなくマジでアンパンマンです。お話の方は展開が読めないので最後の方まで非常に面白く観られました。
2位 ゴーン・ガール
デヴィッド・フィンチャー最新作。相手を出し抜いた方が勝つ、夫婦間のパワーゲームを扱っております。ただしかなり一方的に妻のほうが強いですね。人を嵌めるには役柄を演じ分ける能力が要るのです。大根で有名なベン・アフレックが、映画出るたびに別人に見えるロザムンド・パイクに敵うはずがないのです。ただ、そんな強い妻も格下だと思ってた奴に不意打ちを食らっていました。とにかく、他人を舐めたり型にはめて捉えたりしててしまうとひどい目に遭うよってことですね。気をつけます。
1位 ウルフ・オブ・ウォールストリート
最高。最高です。元証券マンのジョーダンが、そこら辺で拾った仲間たちと詐欺じみた証券会社を立ち上げ、酒池肉林を実現させる!勢いだけのハッタリ野郎共なのに、主人公たちがひどく魅力的に見えました。観てると小学校の休み時間を思い出します。登場人物のほとんどがガキだからですね。皆好き勝手に暴れ回る。僕も混ぜて欲しい。撮影も編集も音楽も奴らの乱痴気を煽りに煽っていきます。特に編集。上映時間が3時間だとは信じがたいほどのスピード感です。最高。
以上10作品と駄文でした。12月30日で惜しくも閉館した、蠍座で観た映画が2本入ってます(『ホームレス理事長』、『あかぼし』)。素晴らしい映画館でした。
去年は注目作しか観なかったように思います。今年は手広く行きたいなあ。それでは。