2024年度春新歓ブログリレー#17

mainvisual工学部三年の篠原と申します。

突然ですが、皆さんは普段どのような映画を見ていますか?SF、サスペンス、アクション、恋愛など様々なジャンルがありますが、私は静かなSFが大好きです。「アフターヤン」や「メッセージ」、アンドレイ・タルコフスキーの「ストーカー」など。未知との静かな対面は緊張感があり、ロマンがあります。そして決まって映像が美しいのです。メッセージに出てくるエイリアンなんてもう最高。泣けてきます。他にも頭のネジがぶっ飛んだ派手な映画も好きです。「π」や「ベイビーわるきゅーれ」、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」などなど。そんな私が今回紹介する映画は「海よりもまだ深く」です。

なんで?と不思議に思ったことでしょう。これはホームドラマですから、地味でとっても現実的なお話しです。先ほど述べた作品群と全く系統が違います。では、なぜこの作品を紹介するのかというと、私に新しい映画の魅力を教えてくれた思い入れのある作品だからです。

 

これは是枝裕和監督の作品で2016年に公開されました。母親との思い出から作られた作品で、自身が9歳から28歳まで住んでいた団地で撮影されました。阿部寛を主演に迎え、母親役を樹木希林が演じます。是枝作品の名コンビですね。

実を言うとストーリーは面白くないです。主人公は金も才能もないバツイチの元小説家、母親の住む団地に偶然集まった元家族との、台風が過ぎるまでのひと晩を描いたなんのオチもないお話し。“こんなはずで無かった”という思いを持つ大人がたくさん出てきます。当時中学生だった私は、大人ってそんなものなのかと、寂しいものだなと思いました(笑)。大学生になり大人の仲間入りをしましたが未だに、こんなはずの‘こんな’も思い描けていので焦っています。地味な作品ではありますが退屈することはなく、フッと笑えるところがある良作です。

 

さて、私が気づいた新しい映画の魅力とはなんでしょう。それは、ただの日常も映画の手にかかればとっても印象的なものに映ると言うことです。映画ってすごい。金も才能もないバツイチのダメ男が映画の登場人物になれば、なんだか憎めないやつに見えてしまうのです。汚い風呂場も部屋の小物も懐かしいような、ずっと残っていて欲しいと思うような、味わいのあるものになります。当時の私は本作に出てきたものに憧れてたくさん真似をしました。大通駅の立ち食い蕎麦屋でサラリーマンと肩を並べて蕎麦を啜ったり、カルピス氷を作って食べたり。大きな団子は大通りの三越に売っています。さらに、ばんえい競馬を見たり(普通の競馬を見てみたい)、わざわざ墨をすってみたりもしました。まだできていないのは台風の夜に公園でお菓子を食べることですね。北海道は台風が少なくて残念です。主人公が気に入った言葉を付箋に書いて書き留めているのですが、それも真似していました。こんな普通のことが、映画になると憧れるくらい素敵なものに見えるから不思議です。となると、なんだか自分でも映画が撮れる気がしてきませんか。変に脚色しなくても日常を切り取るだけでそれなりの絵になるくらい、私たちの生活は彩りのあるもののように思えてきます。そんなことに気づかせてくれた本作は私の中で大切な映画の一つになりました。

映画に求めるものは、興奮と映像美。巨大ロボット、狂人に天才、宇宙に砂漠、超絶美人!日常には現れない存在に憧れ、現実には起こらないハプニングにワクワクする。ダイナミックな感情の駆動こそが、映画を観る醍醐味である!そして、私たちの日常は映画にも劣らぬほど味わいのあるものなのだ!

「300円くじは絶対に当たるだよ。」と言うセリフが出てきますが、この映画は私にとって当たりの宝くじだったのかもしれません。

 

皆さんも、たまにはほのぼの日常ムービを観てみてはいかがでしょうか。UNEXTでは無料で観られますよ。

読んでいただきありがとうございました。

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