2024年度春新歓ブログリレー#11

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法学部2年の阿部です。映研に所属して1年、人生で一番映画を観た年でした。監督の名前すら、気にも留めなかった元高校生が、映研部員や映画館のバイト仲間と、映画について多少語らえるようになりました。今、「先輩たちの話がマニアック過ぎてついていけない…」と思っている新入生の皆さん、大丈夫です!分からないことはじゃんじゃん聞きましょう。おすすめ映画を聞いたら、喜んで教えてくれますよ。そして、一緒にいっぱい映画を観ましょうね〜📽
さて、今年は沢山映画を観たので何について書こうかとても悩みました。今回は、記憶も新しいので現在上映中の「ミッシング」(吉田恵輔)について書きたいと思います。

ちょうど一年前、私は同監督の「空白」を観ました。この作品がとても印象的で、ぜひ昨年のブログリレーにしたかったのですが、当時の語彙力ではどうしても作品の良さを書き表せられなかったんです。先日「ミッシング」を観て、「空白」と同じ衝撃を感じました。今ならこの感動を言葉にできる気がします。チャレンジさせてください!
始めにあらすじを…。「ミッシング」は、一人の幼い少女が失踪して数ヶ月経ったところから物語が始まります。少女の両親や叔父、その失踪事件をドキュメンタリー化する記者など、その事件を取り巻く人々が描かれています。心や信念などの大切なものを失ったり、その中で小さな光を見つけたりする、そんな映画です。

中心に映されるのは、少女の母親、沙織里(石原さとみ)です。彼女は、娘と再会するために何でも、どんな小さなことにでもすがります。希望が残っているから、母として向き合い続けなくてはならないと無意識に感じているのかもしれません。一瞬でも諦める姿を娘に見せてはいけないのです。その残酷な希望が「空白」との大きな違いの一つだと思います。(「空白」は、万引き未遂をしたかもしれない娘が、死んでしまったところから話が始まります。)そして、必死にもがく自分とは同じ熱量で向き合ってくれない夫、失踪直前に娘と一緒にいたのに捜査に協力してくれない弟、何も知らないくせに勝手に誹謗中傷してくるネット上の人々…。街の中の人々の攻撃的な言葉が大きく聞こえてきます。道でぶつかって喧嘩をしている人たち、スーパーで文句を言う人など。沙織里には、世の中がひどく狂って見えます。

それでも長い時間をかけて、ぶつかり合いながら、少しずつ互いに歩み寄ったり、折り合いをつけたりしていきます。その中で見つけた小さな光が、どんなにまばゆく鮮やかに見えるのか…。終盤のシーンはとても綺麗です。パンフレットから、お気に入りの一節をここに書かせていただきます。『光はどこかから与えられるのではなくて、自分が気づくかどうか。』(「missingミッシング」松竹株式会社 事業推進部発行,2024年,30頁)

私は、「空白」も「ミッシング」も観ながらボロボロ泣いてしまいました。しかも結構序盤からです。これは、悲しいや嬉しい、感動の涙ではなく、混乱の涙という言葉が一番しっくりくるように思います。私が感じる、吉田監督の作品の最大の特徴は、人の心を客観的に見ることができるところです。私たちは日々、自分自身を中心に、主観的に周囲の人間を見て生きています。しかし、吉田恵輔の書く脚本には、視聴者が気持ちを入れ込めるような唯一の主人公は登場しません。全ての登場人物が、その人の人生の主人公であり、その人の主観でものを見ているということを、我々は客観的に見ることができるのです。全登場人物の気持ちをよく理解はできますが、完全な共感や同情はできません。そのため、一つの画面に同時に複数人のそれぞれの感情が映し出され、それを受け止めきれなくて私は泣いてしまいます。涙で複数のすれ違ったり対立したりする気持ちを消化しているような感じです。世界はこんなにも色々な人が、色々な感情で動くことで回っているのかと驚かされます。
最後に、この作品のすごいところをもう一つ。パンフレットにシナリオ決定稿がすべて載っているんです!インタビューも沢山で、100ページ弱に及ぶ手の込んだパンフレットが1200円で買えるなんて、太っ腹すぎますね。機会があればぜひ手に取ってみてください。実は、映画のパンフレットって日本独自の文化らしいですよ。作品によって中身の濃さは全く違うので、事前に調べたほうがいいですが、気に入った映画は思い出として手元に置いておきたくなりますね。

最後まで読んでくださって、ありがとうございます。拙い文章でしたが、少しでも映画の魅力が伝わっていればと思います。気になった方は、ぜひ映画館へ足を運んでみてください。ハンカチと一緒に。ぶるるる···

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