おとぎの国アンダレーシアの森の中で動物たちと仲良く暮らすジゼルは、ある日王子様と運命的な出会いを果たしすぐに結婚を約束する。しかし結婚式当日、ジゼルは玉座を奪われることを恐れた女王の手によって井戸に落とされてしまう。そして彼女がたどり着いたのは…現代のニューヨークだった!おとぎの国の価値観なんて通用しない、”永遠の幸せなんて存在しない場所”ニューヨークで、ジゼルはどうなってしまうのか?「真実の愛」とはいったいなんなのか?
こんにちは。映画研究会一年の保坂です。今回は私が幼い頃から大好きなディズニー映画、「魔法にかけられて」を紹介します。
この映画はアンダレーシアを描いたアニメーション、そしてニューヨークが舞台の実写が織り交ぜられた珍しい構成になっています。
結婚式のための真っ白なドレスを着たままニューヨークのマンホールから出てきて途方に暮れていたジゼルは、偶然通りかかったシングルファザーのロバートに助けられます。いかにもおとぎの国のプリンセスという振る舞いのジゼルを見て、ロバートの幼い娘は彼女を本物のプリンセスだと信じるのに対し、現実主義のロバートは「変な女の子」としか考えません。
私が思うこの映画の魅力は、そういったおとぎ話と現実とのチグハグさにあります。例えば歌いながら動物と一緒に部屋の掃除をするのはきっと誰もが見覚えのあるような「プリンセスあるある」ですが、舞台がニューヨークとなれば集まってくるのは下水道から出てきたネズミやゴキブリ、ハエなどで、とても美しいとは言えない映像へと変貌を遂げます。勝手に部屋のカーテンを使ってドレスを作ったり、弁護士として働くロバートに離婚交渉の依頼をしている夫婦に空気の読めない質問をしてしまったりするジゼルに周囲の人たちは初めは困惑しますが、彼らも、そしてこの映画を見る私たちも、純粋で思いやりのあるジゼルに次第に心惹かれていきます。確かにジゼルをはじめアンダレーシアからニューヨークに飛び出してくる登場人物たちの行動は、現実世界を生きる人々からすれば非常識なものには変わりありません。アニメの中ではかっこいい王子様も、ニューヨークへやってくれば単なる間抜けなナルシストに見えてしまいます。しかし、そのチグハグさがたまらなく愛おしいのです。
私の一番好きなシーンが、公園でのミュージカルシーンです。やはりプリンセスらしく突然歌い出したジゼルをロバートは止めますが、それを聞いていた路上パフォーマーが続きを演奏し、最終的に公園中の人を巻き込んだ大合唱になっていきます。周囲の人々を幸せにするジゼルの魅力が溢れているのと同時に、それまで冷たい面ばかり映し出されていた現実世界にも愛や希望を感じられる場面です。
そのような中で元の世界に帰るための方法を探すジゼルですが、彼女を追ってアンダレーシアからは次々とキャラクターたちがやって来て、物語は大波乱の展開を迎えます。
私たちに真実の愛とは何なのかを考えさせるとともに、おとぎ話のようにうまくはいかない現実を生きる中でどこかに置いて来てしまった大切なものを思い出させてくれる映画です。
北大の北図書館でも閲覧が可能なので、気になった方はぜひご覧ください。