こんにちは、一年生の田仲と申します。
私が今回紹介するのは、1979年のイギリス映画「さらば青春の光」です。
・タイトルに関して
このタイトル、聞き覚えのある人も多いと思います。そうです。某お笑いコンビのコンビ名です。実はあの名前の元ネタなんですね。というのもどうやらコンビ結成に際して事務所の先輩が二人に、「じゃあ(コンビ名は)俺が付けたるわ。昨日見た映画が2本あるからどっちか選べ」と言ったそうで、その二つが「さらば青春の光」か「復讐するは我にあり」だったため、さすがに後者はないだろうとなり、消去法で前者に決まったそうです。
・映画概要
さて、そんなエピソードのあるこの映画ですが、内容はお笑いなのかというとまったくそうではなく、ジャンルとしては青春映画、ヒューマンドラマというところになるかと思います。ストーリーについては下項にて詳しく触れますので、ここでは背景知識を少しだけ。この映画ではモッズとロッカーズという二つのスタイルが描かれています。モッズというのは1950年代後半から60年代にかけて若者の間で流行したスタイルのことで、細身のイタリアンスーツの上からミリタリーパーカーM-51(現在ではモッズコートとして知られている)を着用し、ミラーとライトでゴテゴテにデコったベスパのスクーターにまたがって街を荒らしたやべえ奴らのことを指します。ロッカーズというのはこれと相対する派閥であり、こちらは革ジャンにジーンズ、髪はリーゼント、カフェレーサーなどのオートバイにまたがり夜な夜な仲間にレースをふっかけて湾岸ミッドナイトという、不良を地で行くスタイルの連中でした。ロッカーズとモッズは当時バチクソに仲が悪く、たびたび衝突を繰り返していたそうです。本作「さらば青春の光」はまさにそんな時代を舞台とし、一人のモッズを主人公として描かれるドラマです。忠実に再現されたモッズファッションやザ・フーの音楽なども本作を語るうえで外せない魅力ですので、視聴する際はそういった点も是非お愉しみいただければと思います。
・ストーリー
広告会社の郵便室係である若者、ジミー・クーパーはモッズであり、週末には乱交、暴走、ドラッグ、ロッカーズとの喧嘩と華々しい不良生活を送っていた。その不良ぶりは留まることを知らず、挙句の果てには薬局からのドラッグの窃盗や職場の無断欠勤などを引き起こす。しかし彼らはそんな行動を悪びれることなどなく、その過激さは増す一方であった。ある祝日、クーパーらモッズたちは海沿いの街で集会を行う。だがそこにはたまたまロッカーズたちも居合わせており、両者はついに全面衝突した。乱闘の中、次第にモッズたちは暴徒化し、暴動が巻き起こる。その最中、クーパーは思いを寄せるモッズの女性、ステフと交わっており、モッズとクーパーの興奮はこの日頂点に達する。だがその後、モッズたちの熱は急速に冷め、平凡な日々が戻ってきてしまう。あの日の興奮が忘れられないクーパーは次第に孤立し、やがて彼の青春は儚く過ぎ去っていくのだった……。
・見どころ
本作の見どころはやはり卓越したセンスで描かれるリアルなモッズのライフスタイルでしょう。完璧に再現された衣装やバイクはどれも抜群にキマッており、そのカッコよさに痺れます。そして役者の見事な演技から感じ取れる、停滞気味であった当時のイギリス社会で若者たちが抱えていた行き場のない怒りは、どこか今の日本を生きる我々にも響くところがあり、それを発散するかのような刹那的な生き方には思わず惹きつけられてしまいます。
また私が本作で特に素晴らしいと思うのはそのストーリーです。これは若者たちの青春を描いたものではありますが、日本の作品でよく描かれるようなキラキラで爽やかな青春ストーリーとは全く異なるものです。モッズたちの熱狂は彼らにとっての青春ではありますが、その光の裏には社会からの疎外という影があります。また主人公のクーパー少年はモッズとして生きるという理想世界と実際の現実世界との乖離に苦悩します。クーパーは終盤、この苦悩を乗り越えますが、それは少年時代の夢の終わりと、かつて彼が嫌っていた大人の仲間入りという何とも切なく寂しい成長なのです。その様を目にしたとき、きっと誰もが「さらば青春の光」という邦題に納得することでしょう。
・まとめ
本作は「トレインスポッティング」などに代表されるユースカルチャー映画の原点とも言える作品です。この作品は大人や体制への反抗心という、いつの時代も若者の心の奥で燻っている思いや、さらに彼らがその心を捨て社会に従属していく様が巧みに描写されています。ですからこの作品には、時代を超えて全ての若者に刺さるものがあると私は思います。また国こそ異なりますが、この映画はアメリカン・ニューシネマともどこか通ずる部分があると思いますので、そういった作品が好きな人にもおすすめできる映画となっています。是非一度ご覧ください!
ユースカルチャー映画にも限りませんが、「美しきあの日々」を本当に魅力的に描くにはリアルを超えたリアリティのセンスが必要ですよね。昔の不良の抗争を、痺れるほどカッコよく描けるのは素晴らしい才能だと思います!